また「ダイサギソウ」盗掘疑い

ダイサギソウ(資料写真・奄美市提供)

ダイサギソウ盗掘が疑われる痕跡(奄美市提供)

10月5日に確認されたモダマ(奄美市提供)

モダマの切断痕(奄美市提供)

奄美市内山中で「モダマ」の違法採取も パトロール強化へ

奄美市内の山中で、絶滅危惧種「ダイサギソウ」の盗掘が疑われる事案と「モダマ」の違法採取が発生した。先日も龍郷町の山中で同様の事案が発生したばかり。奄美署、奄美市は現場を確認し、パトロールを強化している。

「ダイサギソウ」盗掘の現場は奄美市内の山中(詳細地点は希少種保護の観点から非公開)。10月6日に盗掘された可能性があると住民から環境省へ通報があり、9日に同省職員が現地を訪れ、掘り返された痕跡を確認。11日に同省から奄美市に報告、同市担当者が現地を確認し、掘り返された痕跡を確認した。13日には発見した住民、奄美署、同市の3者で現場を確認、ダイサギソウ2株の滅失と少なくとも5か所で掘り返されたような痕跡を確認した。

今後の対応としては奄美大島自然保護協議会によるパトロール、奄美市による開花期のパトロール、市民などへ向けた周知と普及啓発の実施をしていくという。

ダイサギソウは環境省レッドリストの絶滅危惧1B類、鹿児島県レッドリスト絶滅危惧1類。山地の日当たりのよい林縁に生える地生ランで白い花を咲かせ、奄美大島、徳之島などに分布。モダマは屋久島や奄美大島などに分布するマメ科のつる性植物で、海岸近くや川沿いなどに生育。5~6月ごろに開花し、秋から冬にかけて長さ1~1・5メートルの大きな豆果がなる。

奄美大島5市町村では、島固有の種や数の少ないもの、盗掘盗採のおそれがある動植物を守るため「希少野生動植物の保護に関する条例」を制定しており、ダイサギソウもモダマもこれに該当。違反すると1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。モダマは奄美市文化財保護条例の市指定文化財にも該当している。

「モダマ」の違法採取も奄美市内山中(非公開)。5日に奄美大島自然保護協議会のパトロールでモダマの豆果を確認していたが、12日に行った同会パトロールで、消失していることを確認。13日に奄美市職員が現地でモダマ豆果の消失と切断痕を確認し、奄美市教育委員会に情報共有。14日に奄美署、同市で現地を確認、15日には同市教育委員会も現地確認を行った。

今後の対応としては奄美大島自然保護協議会によるパトロール、奄美市によるパトロール、市民などへ向けた周知と普及啓発を実施する。文化財保護審議会(20日予定)に現状を報告し、今後の対応を協議、指定文化財案内板も更新していくという。

奄美市名瀬総合支所環境対策課・文化財課・住用総合支所市民福祉課は「世界自然遺産に登録され、国内外から注目されている中で、このような事案が相次ぎ、非常に残念。これまでに普及啓発や希少野生動植物の保護パトロール、センサーカメラの設置など取り組みを強化してきたが、関係機関で連携し、引き続き対策の強化について検討していきたい。奄美大島の動植物は、保護のため法律・条例により捕獲などが禁じられているものが多数ある。地域の宝として野生のまま・ありのままの姿を楽しんでほしい」としている。

環境省奄美群島国立公園管理事務所の阿部慎太郎所長は「どういう人が採っているのかわからないが、島に自生する貴重な植物なので、ぜひ自然の中にある状態で見守ってほしい」と語った。