九州高校野球ハイライト

【決勝・大島―九州国際大付】4回表、初めて三者凡退で打ち取って、笑顔でベンチに引き上げる武田主将(左)=平和リース

 

 

最高の「練習場」
甲子園への貴重な収穫
大島

 

 

 「勝負は決まったようなもの。これから『練習』をするぞ!」

 三回裏の攻撃前に塗木哲哉監督が檄を飛ばした。

 三回までに満塁弾を含む8安打を浴び、10点奪われた。現時点での力は相手が上。ならば「大勢の観客が見ている言い訳のきかない舞台」(塗木監督)を「練習」ととらえ、今後のための経験を積む場にする。大胆な「開き直り」が試合を立て直すきっかけになった。

 守備のテーマは「打たせてとって最少失点で切り抜ける」(塗木監督)。二回途中からリリーフに上がった武田涼雅主将は「変なプライドが邪魔して」ど真ん中の直球を満塁弾されたことを悔やむ。大事なのは「抑えてやろう」と力むことでなく「打たせてとる」ことに気持ちを切り替えた。

 外角低めへ力のある直球を基本線に、変化球を使って緩急を生かせば、さしもの九国大付打線も打ち損じたゴロや、飛球が増える。良い当たりも野手を突く確率が上がる。バッテリーがリズムに乗ってくれば、守備位置を自在に動かして「守っているところに打たせる」こともできる。そんな投球のコツを武田主将は回を追うごとに会得していった。遊撃手・有馬が、二塁手・体岡が、捕手・西田が好守で盛り上げ「守ってくれる野手のおかげで最後まで投げられた」と感謝した。

 守備が安定したことが九回の猛追につながった。死球の上原、右前打の粟飯原、3ランの美島…流れを作ったのは「試合に出たい気持ちを抑えて、サポートに徹してくれた」(武田主将)2桁背番号の選手たちだった。

 試合中は「楽しめた」武田主将だが「強豪私学に勝てなかった」悔しさも同時に感じた。大島が掲げる「甲子園ベスト8」の前に立ちはだかるのは、140㌔超級の投手や、九国大付クラスのスイングスピードを誇る打線があるチーム。それらをいかに守り、打っていくか。九州準Vで自信をつけると同時に、課題が明確に見えたことも、来年への大きな「貴重な収穫」(塗木監督)になった。
                                 (政純一郎)