希少種識別アプリ開発、実証実験へ

奄美大島の盗掘・盗採について語る常田会長(写真提供 常田守さん)

野生生物違法取引の対応を共有
WWFジャパンがシンポ

 公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区・末吉竹二郎会長、以下WWFジャパン)と野生生物取引監視部門であるTRAFFIC(トラフィック、WWF事務局内)は2日、南西諸島の野生生物の密猟・違法取引(IWT)をテーマにしたシンポジウムを、石垣島とオンラインで開いた。行政、企業、現地の取り組みを共有し、連携強化を図った。また、希少野生生物識別アプリの開発に関する報告もあった。

 タイトルは「今求められるIWT(野生生物違法取引)への対応~南西諸島・世界自然遺産登録を受けて~」。希少な野生生物の密猟・盗掘および持ち出し・密輸の問題が深刻化しており、日本の生物多様性を守るためにも、官民連携したⅠWT対策が求められている。

 対象は旅客輸送航空会社、旅客輸送船舶運航会社、貨物輸送会社、物流・倉庫会社、郵便・宅配会社、関連協会、レンタカー会社、観光関連企業、関係省庁、自治体、関連NPO・NGOなど。

 冒頭でトラフィックが日本は野生生物の輸入大国であるとし、動物が劣悪な環境で運ばれている様子を紹介。WWFは、イボイモリなど日本固有種の密猟・違法取引の状況を報告。現場や水際での対象種の同定の難しさなどの課題を挙げ、全フェイズでの関係者の連携の重要性を説明した。

 行政の役割として、野生生物に関する国の施策も環境省、林野庁、東京税関からあった。税関における2020年度のワシントン条約該当物品の輸入差止等実績は351件、うち生きているものは59件、製品などは292件あり、摘発のための情報提供を呼び掛けた。

 企業の取り組みとしてはANAホールディングス、日本航空・日本トランスオーシャン航空から空港関係者向け研修会の実施や発見時の対応フローの整備などの報告があった。

 現地の取り組みとして、奄美大島と石垣島から報告があった。奄美大島からは、奄美自然環境研究会の常田守会長が登壇。盗掘・盗採の事例を紹介し、「要所要所で締めていかないと。種を守るにはエリアの境界線があってはだめ。奄美の子どもたちの教育も重要」と語った。

 水際対策に期待されるAI技術として、㈱バイオームの技術責任者である源六孝典氏が、沖縄奄美密輸密猟防止アプリを紹介。空港職員による一次スクリーニングをサポートするアンドロイドタブレット用アプリで、独自の生物同定技術と国内最大級の生物データベースが生かされている。手荷物検査などで発見された生物の種同定や事後対応に活用でき、現在開発中。環境省との連携のもと、沖縄奄美エリアを試験地として実証実験を開始予定だという。