自然環境モニタリング講習会

自然環境モニタリング講習会をする鵜川信准教授

統合型モニタリングシステムの構築必要

奄美大島における自然環境モニタリングの講習会(主催:鹿児島大学鹿児島環境学研究会)が12日、奄美市の住用総合支所で開かれた。野生生物モニタリングの活動やオオトラツグミの一斉調査についての講演、鹿児島大学が奄美で取り組むモニタリングプロジェクトの説明などがあった。WEB参加者と対面参加者(約20人)はICTを利用し、新たな転換期を迎えたモニタリング活動に理解を深めた。

奄美の自然を守る上で、固有種の個体数や生息環境のモニタリングは重要な活動。公的機関だけの活動は厳しく、地域にモニタリング活動を理解を促すためのもの。

環境省奄美群島国立公園管理事務所・阿部愼太郎所長は、モニタリング活動と同時に、1999年からアマミヤマシギ・オオトラツグミ、2004年からアマミノクロウサギの保護増殖事業を展開。00年からマングースの駆除防除事業を展開しており、01年に3375頭捕獲されたマングースは、07年に783頭に減少、18年の1頭を最後に今年度まで捕獲はない。また、クロウサギの個体数もおおむね横ばいか増加傾向だと報告した。

モニタリングの継続は不可欠だが、保護増殖事業の終了も含め年々縮小傾向にあるとし、「顕著で普遍的な価値が維持できるモニタリングは50年、100年スパンで考えなければならない」とした。

NPO法人奄美野鳥の会・鳥飼久裕会長は、「オオトラツグミの個体数は、1994年にモニタリングを開始後13年以降は100個体前後に安定。島内に約2000~5000くらいの生息が推測できる」と市民参加型モニタリングの効果を述べる一方、鹿児島大学農学部・鵜川信准教授は、「従来とは違う統合型モニタリングシステムの構築が必要」と述べた。

同町役勝川周辺の森林に30カ所のモニタリングサイトを設置する計画は20年度にスタート、22年度に設置が完了する。サイトには気象観測装置・赤外線カメラ・自動録音装置などが置かれ、構造の異なる様々な森林に対応できるという。

また、持続性を確保するために提案する三つのコンセプトとして、①楽しいモニタリング②利益の出るモニタリング③簡単に行えるモニタリング―を挙げた。