サンゴの産卵始まる

大和村国直沖で確認されたクシハダミドリイシの一斉産卵(22日、興さん撮影)

夜の海中を彩る無数の「バンドル」(同日、興さん撮影動画より)

奄美海洋生物研究会会長の興克樹さん(51)が20日から22日にかけて3夜連続、大和村国直沖でサンゴ(ミドリイシ属)の一斉産卵を確認した。興さんがサンゴの一斉確認をしたのは今年初で、海中に広がる淡いピンク色の「バンドル」(精子と卵の入ったカプセル)の様子を撮影。奄美群島では、これから夏にかけて様々な種類のサンゴが産卵していく。

国直海岸沖合約300メートル~500メートルの礁斜面には、サンゴ群集が南北約1キロにわたり生息している。同沖のサンゴ群集は、1998年に発生した大規模なサンゴの白化現象により一度壊滅しているが、その後急速に回復。集落の人々に見守られる中、無事順調に成長を続けており、今回その様子が写された。

20日に動画、21日に写真、22日は動画、写真ともに撮影。満月から5日目の20日の産卵は、午後10時半ごろから始まり、ミドリイシ属のサンゴが次々と産卵。卓上のハナバチミドリイシやクシハダミドリイシ、樹枝状のトゲスギミドリイシなどミドリイシ属約10種の一斉産卵を確認。同11時まで続いたという。

サンゴの産卵では、精子と卵の入った「バンドル」という直径0・5ミリほどの淡いピンク色のカプセルがポリプ(触手を含むサンゴ本体)から放出。ヌラプラという幼生となり、数日から数週間浮遊した後、適地に定着しサンゴとなる。

興さんは今回の確認に対し「力強いサンゴの営みに感動した」と話し、「奄美大島では大規模白化の他、2000年から08年のオニヒトデの大発生で多くのサンゴが失われた。全体的にはサンゴは回復傾向にあるが、回復が遅れている海域でのサンゴの幼虫の定着を期待している」と願いを語った。