「防災ラジオ」導入も約300戸〝情報空白地帯〟

徳之島町が運用開始も「約300世帯」の〝情報空白地帯〟を生んでいる「防災ラジオ」

徳之島町 泥縄対応で基地局増設へ
シミュレーション不備否めず

 【徳之島】徳之島町は2021年度防災関連施設整備(防災行政デジタル無線)事業で「防災ラジオ」型の戸別受信機に切り替え、一般住民世帯約4700戸に優先配布。従来のアナログ方式も3月15日に停止した。ところが、同町下久志―母間地区の約300戸は、電波調査の不備などもあり「受信不能・不良」状態のまま約2カ月半が経過。大雨・台風シーズンに「町民の生命・財産」を守るための多額の財政投資に逆行して〝情報空白地帯〟を生んでいた。

 同町総務課によると同事業は、国が今年11月30日を当初予定したアナログ方式周波数の使用期限に備えて「280MHz(メガヘルツ)デジタル同報無線」の戸別受信機「防災ラジオ」に切り替えるもの。基地局(送信局)2カ所など含めた総事業費は約5億4890万円(発注額)。

 いわゆる「ポケベル波」とも称される「280MHz」は、到達性や建物浸透性の高さから非常時通信用に見直されている。役場庁舎など拠点や各集落駐在員(区長)らが入力発信した文字メッセージをクリアな合成音声に変換。最後のメッセージは繰り返し聞くことができる。通常のAM/FMラジオにも使用でき、重宝がる町民が多いのも事実だ。

 同事業で「防災ラジオ」は計5000台を調達した。1月から住民登録世帯を優先して配布を始め約4700戸(台)の配布を終えた。各事業所などへの配布条件は不明で「現在検討中」という。

 下久志―母間地区(4集落)の住民多数から「受信ができない」や「ノイズが多くて聞き取れない」など苦情が殺到したのは「工期の都合でアナログ方式を停止した」(町)3月15日以降のことだ。住民と板挟み状態の集落駐在員たちも「防災ラジオは全く聞き取れない。集落行事など通達事項は公民館のスピーカーマイクを使うが、高齢者や集落の末端まで届いているかは不明」。また「電波状態が悪い上にタブレットを使った入力も面倒で、非常時に対応できるかも疑問。電波が弱く文字化け放送も多い」と頭を抱える。防災情報に加え、地域コミュニティにも影響が及んでいる。

 施工業者らへの取材の結果、2カ所の基地局(井之川岳(西側)と手々地区)の配置が関係していた。電波調査などシミュレーションの不備も否めない。町側は「下久志集落と母間地区の間に3基目の送信局設置を目指す」方針を説明。〝泥縄対応〟は国県の補助予算確保などの都合で来年度以降にずれ込む可能性も。

 拙速的に停止したアナログ方式だが、国はその後、新型コロナウイルス感染症の社会経済への影響などを考慮した激変緩和措置で、使用期限を2年後の24年11月末に延期した。

 同町の幸野善治副町長は「(電波)調査もして利用できると思っていたが、住民から苦情が来て分かった。平等性を欠くのでなるべく早く対応したい。申し訳なく思っている」と話した。