国天然記念物・オカヤドカリの大群

オカヤドカリの大群による種の保存・生命誕生のドラマ(円内は、夜光貝を宿貝にひと際目立ったムラサキオカヤドカリ)=27日午後9時すぎ、徳之島町金見崎海岸

徳之島町金見崎 種保存のドラマが本格化

 【徳之島】徳之島町東北端の金見崎(かなみざき)海岸では、国の天然記念物オカヤドカリたちの〝種の保存・生命誕生のドラマ〟が本格化している。足の踏み場もない大群が、夜の砂浜や岩の一部を覆い尽くし、大自然の摂理とリズムにそって密かに繰り広げる同海岸名物。亜熱帯の島の夏本番を告げる風物詩の一つともなっている。

 奄美群島国立公園(第3種特別地域)でもある金見崎海岸。観察ポイントは、同海岸の「金見崎灯台」寄りに広がる通称「真崎(まさき)浜」エリア。河川がないため生活排水や赤土流出汚染にも無縁。清涼飲料水容器など外国製漂着ごみ類は悩みだが、「世界自然遺産の島」の海岸部の大自然を象徴する自慢のエリアの一つ。

 同海岸のオカヤドカリたちの保護・観察を長年続ける金見集落の寿山秋男さん(79)は「昨夏の〝一斉産卵〟は、雨が多かったせいか、異例の約1カ月遅れの7月下旬だった。今年は例年通り梅雨明け(22日)ごろから一気に動きが始まった」。

 その情報で、夜の満潮時間帯をねらって同ポイントを訪ねたのは27日の午後9時ごろのことだった。すでに岩や砂上を足の踏み場もないほどのオカヤドカリの大群が覆っていた。互いの宿貝(貝殻)を「ザワザワ、カチカチ」と接触させながら〝密集・密接〟状態でじゃれ合っているかのよう。

 観察を続けると、その一部は潮だまりの水際に達し、海水に浸って体を揺らしてポンピングをしながら「ゾエア」幼生を放出。赤紫色の無数の幼生(1~2㍉)が小エビやボウフラ状に泳ぐ姿が肉眼でも確認できた。

 寿山さんは「数は、晴れて風波が穏やかな熱帯夜などに多い。少子化の影響もあってか青少年たちの観察が大幅に減った。ヤドカリたちは臆病者。接近しすぎたり、大声を出したりせずに静かに観察を」と話していた