絶滅危惧253種を網羅

山下弘さん著 『奄美大島・徳之島の希少植物』

 奄美の宝である希少植物の調査と保護に全生涯をかけた山下弘さんの集大成『奄美大島・徳之島の希少植物』=写真=が8月、南方新社から発行された。世界自然遺産に登録された奄美の固有種54種を含む、全253種の絶滅危惧種が網羅されている。

 著者の山下さんは、アマミアワゴケやアマミカラヤンなど数種の新種・日本初記録種を発見した奄美の植物写真家の第一人者。奄美大島や徳之島が世界自然遺産に登録される2カ月前、2021年5月28日に病気で他界した。

 本書は、死亡翌年(今年年初)に南方新社編集部に届いた遺稿(14枚のDVDなど)から編集。▽成育環境ごと(渓流沿い・海岸・林緑)に区分▽固有種と固有種以外に分類―など山下さんの意図を尊重し、253種の希少植物もDVDに準じた配列になっている。

 遊川知久さん(国立科学博物館)は序文で「山下さんが愛おしんだ奄美の自然、生物多様性のすばらしさが、本書のページをめくるたびにあふれてくる。生態写真はある瞬間の環境の証拠であり、未来の世代へのリファレンスである」と記している。

 B5版・255ページ、定価5280円(税込み)。問い合わせは、 電話099―248―5455 図書出版南方新社まで。