喜界島・奄美大島でマーキング

千葉県から来島しアサギマダラのマーキング調査を行っている安川憲さん(24日、龍郷町長雲で、周辺にはヤマヒヨドリバナが開花している)


捕獲したアサギマダラの翅=はね=へのマーキング。現在のところ飛来数が少ない

「少なめ、飛来遅れか」
千葉県の安川さん 長野、和歌山からの移動も確認
アサギマダラ秋の渡り

 日本列島を長距離移動するチョウ・アサギマダラは、秋の渡り(南下)が奄美でも確認されている。千葉県佐倉市在住の安川憲さん(71)=日本大学名誉教授(医学博士)は来島し、喜界島と奄美大島でマーキング(翅=はね=への標識)を行っているが、両島とも昨年に比べ数が少なく、安川さんは「飛来が遅れているのではないか」と推測する。

 安川さんは今月19日に来島し、奄美大島経由で喜界島に移動。20日から捕獲(マーキング後に放蝶)を始め、同日は33匹、21日約50匹、22日に50匹余りマーキングした。

 このうち20日にはマークのある個体2匹が再捕獲された。長野県と和歌山県から喜界島に移動したアサギマダラで、日付により和歌山からはわずか4日間で約820㌔を移動。長野からの移動距離は約1100㌔もあり、1カ月弱要していた。「和歌山から喜界まで4日間の移動は、とても速い。風をうまく利用したのではないか」(安川さん)。

 安川さんは22日に奄美大島に入り、23日は雨のため捕獲できず、晴天に恵まれた24日に龍郷町長雲峠周辺でマーキング活動。喜界島同様、奄美大島も飛来数が少なく、同日は午前中14匹の捕獲にとどまった。安川さんは「ヤマヒヨドリバナなど吸蜜植物の状態は、ここ2、3年の中でとてもいい。びっしり開花した群生地も多いが、飛んでいる数が少ない」と話す。全国にいるアサギマダラのマーキング愛好家によるネット情報などからも現在のところ全国的に飛来数が少ないという。

 「喜界島や奄美大島では報告があるが、例年ある屋久島は今のところ報告がない。飛来自体が遅れているのではないか」と指摘する。安川さんは12月にも再来島し、両島を訪れる予定だ。

 安川さんは地元などでもマーキングを行っている。その一つ千葉県東金市八鶴湖では例年、7月に北上が確認されるようになり、8月にはいなくなる。南下の確認は9月下旬からで、11月には終わる。アサギマダラは吸蜜植物を求めて移動するが、安川さんは「本州ではフジバカマを釣り堀のような所にも植栽し、アサギマダラの飛来を待っている。これに対し喜界島や奄美大島の吸蜜植物は自生しており、生態調査に役立つ。アサギマダラのマーキング愛好家にとって、両島の環境はとても魅力的」と語った。