アビコムデザイン 「紬POPかや生地ふきん」

カラフルな色も配し、秋名バラ柄など3種柄で展開。1枚1000円(税別)。「使うほど手になじんできます」と真吾さん、沙弥香さん

リスペクト込めて作成
「島一番コン」工芸・生活用品部門で最優秀賞

 奄美群島観光物産協会の2023年度あまみ島一番コンテストがこの3月に奄美市名瀬の川商ホールで開催された。工芸・生活用品部門には18点の応募があり、アビコムデザインの「紬POPかや生地ふきん」が見事最優秀賞に輝いた。紬を題材にいろいろな商品を生み出すアビコムデザイン。そのひらめきの秘密を代表の迫田真吾さん(42)、デザイナーの迫田沙弥香さん(40)に聞いた。

 山形県の寒河江市出身の沙弥香さんと奄美市出身の真吾さん、2人は東京の会社で知りあった。真吾さんはITのプログラミング、沙弥香さんはWebデザインや商品企画をしていた。その後、結婚を機に奄美大島へ移住し、起業した頃、奄美特産品のパッケージの依頼を受けたことがあった。

 東京では奄美大島は通じなかったが、大島紬は知られており、大島紬の知名度を認識していた。それなら、大島紬の柄を使ってみよう。化粧箱に紬柄をポップにアレンジした。それが、真吾さんが大島紬にひかれた最初の出合いだった。

 一方、沙弥香さんは旅行に行く先々に土地土地のお土産用のふきんがあり、集めていた。「各県にもあるご当地ふきん、奄美にもあっていいのでは」。それが今回のアイデアとなった。

 沙弥香さんが初めて奄美を訪れたのは、皆既日食の頃、奄美が意外に都会で驚いたと話す。2人は豪雨災害の後に島に帰ることを決めた。当時はまだ、グッズやパッケージデザインにポップでカラフルにアレンジされた大島紬柄が使われているものはなかった。「自分たちのデザインに入れよう。使うのなら、紬に失礼のないようにしたい」。紬のバックボーン・歴史を調べていった。それは興味深く、沙弥香さんは大島紬のとりこになった。その中で生産が減ってきていることを知る。もっと若い人たちに知ってもらいたい、という思いが募った。「手軽に手にしてもらえる商品にしたら、大島紬を知らない観光客にも知ってもらえるきっかけになるのでは」。全く違うところから、大島紬を知ってもらえたら、そんな思いが形になっていく。

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 タイツに紬柄をプリントした商品を出した。本物ではできないものを、あえて選んだ。「紬にハサミを入れたくない」。そんな声も聞いた。紬に携わっている人たちにどう思われるかの心配があったが、リスペクトを込めて作成した色紙、タイツ、マスキングテープなどは紬製作者らにも面白がってもらえた。「グラフックデザインの仕事でもお客様から紬柄入れてとのリクエストも聞かれるようになった」

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 これまで観光客メインだった考えが、コロナ禍で自粛を余儀なくされ、「おうち時間」に合うものを作りたくなったという。「キッチンに立つ時間が増えた分、その場所にカラフルなものがあると気分が明るくなるはず」。沙弥香さんは身をもって感じた。「キッチンに立って、島を好きな人が奄美に思いを馳せることができるのではないか。飲食店のお手拭きなど、いろんな場所でも使ってもらえたらいいな」と、紬柄ふきんに島からの思いを乗せる。

 子どもの手書き絵柄を帯封に入れた入学祝いの返礼品に活用されたり、大島紬の魅力を別の角度から発信し続けるアイデアが満載の2人だ。

 「今回の審査は授賞式やアピールする時間があり、出品者らも力が入っていて、ピリッとしているのを肌で感じた。今回の受賞は今までで一番うれしかった」と2人は話した。
(屋宮秀美)

 ※「紬POPかや生地ふきん」は、15・16日、東京の吉祥寺エクセルホテル東急で開催される「第3回まるごと奄美in東京」で景品として用意される予定もある。