昼と夜のステージの合間に、近くの東急百貨店のエントランスで八月踊りを披露するあらしゃげ会の皆さんと楠田莉子さん
おいしそうな島料理が並ぶ(鶏飯)
締めの八月踊りは参加者全員で
7階マルシェコーナーも人気
ウエルカムドリンクは奄美をイメージして
黒糖焼酎蔵元からも参加
ソテツ葉を使った虫かご作りも人気
奄美が東京にやって来た――。15、16日、吉祥寺エクセルホテル東急の8階を会場に「まるごと奄美in東京」が開催された。ステージでは島の特産品の紹介や道の島太鼓、シマ唄などが披露され、同ホテルのコック長らが研究した島料理、黒糖焼酎が蔵元の社長らから直接振る舞われるなど、奄美の魅力いっぱいのもてなしに来場者らは奄美の香りを満喫していた。
7階では入場無料の「まるごと奄美マルシェin吉祥寺」が同時開催され、物産展や機織り体験、泥染め体験などいろんな奄美が体験できるブースを設置。こちらも親子連れでにぎわった。
まるごと奄美実行委員会主催、東急ホテルズ&リゾーツ㈱共催で開かれた。
各日2回の開催で、約420人が来場。来場者らは、奄美をイメージしたブルーのカクテルを手に会場へ。丸田泰史さんの軽快なMCで会はスタート。会場内に設置されたスクリーンに映し出されたJALバーチャルフライトで羽田から奄美空港へ、奄美の観光スポットを巡るという趣向も。映像の中、空港で出迎えた同実行委員長の奥圭太さん(49)がステージに登場、乾杯の音頭を取った。来場者らはバーチャル奄美を楽しみながら、会場中央に用意された同ホテルの料理長らが奄美で実際に食し研究した島料理、鶏飯、ゴーヤいため、油そうめん、豚足など島料理に舌鼓を打った。焼酎ブースも大にぎわいで、この日のための焼酎カクテルも人気を集めていた。
今回は40人余りの実行委員が上京した。会の終盤、あらしゃげ会(築地理昇代表・57)の西浩信さん(64)が道の島太鼓を打ち鳴らすと、参加者らはステージにくぎ付けに。楠田莉子さん(26)が見事な歌声でシマ唄を披露した。
会のメインイベントへ。あらしゃげ会のメンバーを中心に会場内に円陣を作り、この場所に祝いを付ける、「祝い付け」からスタートした。チヂンの音に乗り、男女の掛け合いの歌が絡み合い、会場にハトが響き渡った。来場者らも、手ぬぐいを巻き、一緒に踊り合った。「八月踊りは見せる物ではなく、参加するもの。そこに交流が生まれていく」と西さん。今回は会のメンバー約20人が奄美から上京、東京支部代表の磯昭一郎さん(51)も加わった。
日曜の昼の部に来場した渡辺利栄子さん(60)は、「奄美に住む娘から物産展に行ってほしいと言われてきましたが、こちらにも参加してとても良かった。踊りに神が宿っていました。旅行添乗員で、奄美には何度か行っていたが、今回のような体験は初めてだった」と大満足していた。
六調が終わると、奥委員長が竹に祝儀袋を挟んだ「ハナ」を持って登場。ハナの意味が説明されると、参加者らからもハナが届けられた。ウクライナの女性、樹木ドクターなどからもハナが届く中、中学生の酒匂幸大さん、吉岡宏之さんの2人が登場。小学校4年から取り組んでいる「アマクロ守ろうプロジェクト」を紹介した。
7階会場では、ソテツの葉を使った虫かご作りも人気。伊勢勝義さん(69)の指導で、奄美好きで「実行委のみんなに愛知県から会いに来た」という深谷麻美子さん(32)と大学時代の友人の曽我絵理子さんが熱心にチャレンジしていた。
㈱CONCENTのバーチャル奄美体験のコーナーもあり、海の中のクジラに出会えると、子どもたちが並ぶ姿もあった。
奥委員長は「今年もたくさんの方に来ていただいた。奄美を知ってもらいたい、仲良くなってもらいたい思いが通じたと思っている。集まって、酒を飲んで、誰かが三味線を弾き、太鼓をたたき、いつの間にかシマ唄が始まりみんなで踊っている、そういう私たちの日常を島の暮らしを伝えたい。今回は県大島支庁、市役所、JAL、たくさんの協力があった。できるだけ奄美に近付けたいと、島の野菜、素材を奄美から送った。日常、島の暮らしを感じていただけたのではないか」と話した。
影の仕掛け人で、同委員会会長を務める宮崎緑さんにも話を聞いた。宮崎さんは東急㈱の社外取締役をしている。「コロナ禍で人の流れが止まってしまい、リモート会議が続き、断絶を感じた。『東京から来られないなら、島から会いに行こう。まるごとの奄美を、食、踊り、歌、人みんな連れて、東京で奄美を作っちゃおう』と東急に提案。ホテルでもそういう試みをやったことがない、やってみたいとスタッフ一丸になって楽しみながらやっている。島の若い世代が頑張ってくれて、エネルギッシュに進めることができた」と宮崎さん。
ホテルスタッフは、手ぬぐいをヘアバンドにし、同ホテルの村井淳社長も自ら大島紬をきて会場を笑顔で見守っていた。
(屋宮秀美)