県知事選振り返る

選挙期間中、奄美大島に来島した現職の塩田康一氏。幅広い支持が圧勝につながった

組織+草の根で現職圧勝
奄美振興、政策の実現注視

 7日に投開票が行われた県知事選挙は現職の塩田康一氏(58)が初当選を果たした前回より得票を11万4千票余り上積みし33万7357票を獲得、新人2人を大差で退け圧勝した。現職の知名度に加え、政党のほか、1千を超える企業・団体の推薦と組織力を発揮。さらに初当選の原動力となった草の根的な支援の維持が幅広い集票につながった。前回、前々回と2回連続で現職が落選する波乱が続いていた知事選。2012年以来の現職再選となった。

 「多くの組織・団体の皆さんに支援をいただいている。そして4年前に草の根的に応援していただいた皆さん。こうした幅広い県民の皆さんの支援をいただいたことは、これまでの4年間の県政に対し理解、評価をいただいたと考えている」。支持者を前にした街頭演説で塩田氏は述べた。勝因はこれに尽きる。

 塩田氏を推薦した政党は自民、公明、国民民主の3党。こうした政党に関係する議員は地元を中心に街頭演説など街宣活動に同行し選挙戦をバックアップ、塩田氏を支えた。団体では農政連や建設業協会といった自民党友好団体だけでなく、野党支持の連合鹿児島も推薦したことで「県民党としての選挙戦ができた」と塩田氏は振り返った。官僚としての豊富な行政経験に裏打ちされた堅実で安定した県政運営がさまざまな団体の推薦につながったのだろう。

 一方で大票田・鹿児島市の票の流れに注目したい。塩田氏と次点だった米丸麻希子氏(49)の鹿児島市での得票は、塩田氏が10万3484票、米丸氏7万2663票とその差は3万票余り。得票率でみると塩田氏52・93%に対し、米丸氏は37・16%と4割近くを占めた。無党派層の多さから「大票田の鹿児島市でどういう風が吹くか、なかなか読めない」と塩田氏も警戒していた中、鹿児島市で米丸氏は善戦したと言えないか。県全体でも投票率は前回を5・08ポイント下回る44・76%となり、鹿児島市も40・59%(前回44・80%)に低迷したが、投票率が上昇すれば両氏の得票にさらに影響を与えたかもしれない。

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 米丸氏が同市での出陣式や街頭演説で強調したのが、県が同市のドルフィンポート跡地で進める新総合体育館建設計画の見直し。さらに米丸氏だけでなく、樋之口里花氏(52)も公約の柱に掲げた子ども医療費窓口負担ゼロの実現など子育て支援策の充実。この二つの主張は市民の関心を集めたのではないか。塩田氏は「新総合体育館建設計画はさまざまな議論を重ね県民の意見をうかがった上での県としての判断」「子ども医療費の窓口負担ゼロ、学校給食費の無償化は非常に多くの財政負担を伴う。全国に共通する子育て施策策であり、国の責任と財源によって全国一律の支援をこれまで強く要請している」との説明を重ね、理解を求めた。子育て支援策は今回の知事選の争点の一つとなった人口減少対策につながるだけに、現在の子育て支援策で十分か検討が求められる。

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 新たに4年間の県政かじ取りを担う塩田氏には引き続き奄美群島の振興発展に向けた取り組みを期待したい。発表したマニフェスト(政策綱領)では奄美・離島の振興について、▽改正奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)の新たな奄美群島振興開発計画に基づく各般の取り組み推進▽屋久島、奄美大島・徳之島の世界自然遺産としての価値を守り、継承しつつ、観光資源としても活用し、保全と利用の両立▽情報通信環境の整備に取り組み、遠隔医療の推進による医療提供体制の充実▽沖縄との連携等により奄美群島の観光や産業の振興―などを掲げている。政策の実現を注視しなければならない。

 奄美市名瀬で行った街頭演説で、塩田氏はこう語った。「昨年、奄美群島は復帰70周年の節目だったが、70年前の人口は20万人で、今はその半分となった。地域をしっかり維持発展させていくための活力。それに向けて人口減少に負けない地域づくりを進める」。手段として挙げるのが「稼ぐ力」のさらなる向上。産業振興による所得向上で暮らしの豊さが実感できるようになることで、「稼ぐ力」は身近になる。

(知事選取材班)