整備に汗を流す前底自動車整備工場の久保さん
喜界町湾の前底自動車整備工場(前底浩喜代表取締役)に勤める久保奈々さん(19)がこのほど、国家資格の3級自動車ガソリン・エンジン整備士に合格した。久保さんは喜界中学校卒業後に、やりがいのある仕事を求めて15歳で自動車整備の世界に飛び込んだ。島内唯一の女性整備士の誕生には、整備士や業界関係者の期待も高まっている。
久保さんは同町荒木出身。幼い頃から農機具などの修理を手掛ける父に憧れ、いつの間にか自身も機械いじりが趣味に。進路選択が迫った中学校3年生の時に「技術を身につけたかった。高校で無駄な時間を過ごすなら、自分のやりたいことを優先したい」と整備の道に進んだ。
3級は、ガソリンエンジンで動く車の基本的な整備を行える資格。当初の目標であった自動車免許の取得後、「資格があればもっと仕事ができる」と合間を縫って勉強を始めた。3年を超える実務経験がある久保さんは実技試験が免除される。2月には奄美市内に1か月間泊まり込んで講習も受けた。3月に挑んだ試験に受かり、念願の合格証書を手にした。
久保さんは「いろいろと変わるかなと思ったけど、まだ実感がない」と照れくさそうに話す。ただ、仕事については「実際に乗って構造がわかることで理解も深まる。一から原因を調べて直った時は本当にうれしい」とやりがいも感じている。
同社の前底将太専務は「新しい風。多感な時期に働き始めたが、根がまじめでしっかりやってくれるという安心感がある。(他の社員も)空気が変わってきている」と話すなど、久保さんは職場の良い刺激剤にもなっている。奄美大島自動車整備振興会の担当者も「全国的に整備士不足に悩む業界。若い女性の整備士は珍しく、新しいモデルになれば」と期待を込める。
近年は社会になじめず働き方に悩む若者も多い。自分の選んだ道を歩む久保さんは「やりたいことがあれば実際にしてしまったほうがわかりやすい。女性だからということはない。やってみればいい」と助言する。次の目標は「2級合格」。「(先輩に)教えてもらいながら、もっと仕事ができるようになりたい」と、愛車の川崎バイク・ニンジャを飛ばし、充足感あふれる職場に通っている。