県議会産業経済委と徳之島の中核的農業経営者クラブ員(左側)との意見交換会=9日、徳之島町
クロウサギの食害に遭ったタンカン樹(提供写真)
【徳之島】県議会産業経済委員会(白石誠委員長ら10委員)の徳之島行政視察2日目の9日は、同島の農業経営者クラブ(福洋一会長)と意見交換会も実施。農家代表は、県本土に比べ割高の生産資材価格が経営を圧迫する厳しい現状、世界自然遺産登録の陰でアマミノクロウサギなど希少種による永年作物の果樹食害なども提起。同食害を初認識した委員たちは「しっかりと調査し、共通認識での共生対策が大事」と強調した。
県徳之島事務所会議室で開催。経営者クラブからは肉用牛・サトウキビ・バレイショ・果樹などの中核的農家代表9人。県議会・同常任委メンバーと県当局(本庁舎及び大島支庁)関係者ら合わせて約30人が出席した。課題は「離島の生産コスト」と「鳥獣害」問題の2点に絞った。
生産コストの問題で農家代表は「農業資材が高騰を続ける中で、離島は海上輸送運賃がさらに掛かり、同じ資材でも県本土に比べて高い。(公的補助で)県内では同一価格で供給できる体制を作ってほしい」と県議会サイドでの注力を要望した。
果樹園芸農家は、国指定特別天然記念物アマミノクロウサギをはじめケナガネズミなど希少種の齧歯(げっし)類が、成木化に5年以上を要する永年性樹木のタンカンの幹を食害して枯死危機に至らしめている現状を写真でも報告。「天然記念物のカベは厚い。クロウサギなどと徳之島の農業が共生するための予算の確保を、農水省や環境省に伝えてほしい」とも要望。
果樹園やその周辺に居ついた個体については、環境省や自然保護団体などが捕獲・保護して「山に帰す」取り組みなどの検討も提案した。
世界自然遺産の島での同食害を初めて知った委員たちからは「しっかりと調査し、共通認識での共生対策が大事。(出身地の)屋久島では猿対策をしているが、自然も人の生活も大事。共生のため、一歩でも進むように取り組みたい」とも述べた。
農家代表たちはほか、子牛価格対策にも絡めた「和牛消費拡大のPR」、増産推奨しながら約30年間据え置き状態で経営が厳しいサトウキビ価格の引き上げ、キビ収穫機ハーベスターの更新導入補助(国60%)への県補助付加(沖縄県は20%)など取り組みも要望した。
一行は、閉会にあたり「農業県鹿児島で皆様の生の声を委員会に反映させていきたい」とも述べた。