杵で米粉をつくる京田辺シュタイナー学校の生徒たち(9日、宇検村の平田集落)
「ヨーハレマイヨイ、ヨーハレシンヨイ」――。宇検村の平田集落にある平田公民館前で8、9の両日、子どもたちだけによる同集落の伝統行事「ハマムチ」が行われた。修学旅行で初来島したNPO法人京田辺シュタイナー学校(平清代表理事、生徒272人)=京都府=の生徒23人が約30年ぶりに再現。炎天下で汗を流しながら臼の米を杵(きね)ですり、元気な掛け声を集落内に響かせた。
「ハマムチ」は餅作り、海釣り、鍋作りなど作業を小学3年~中学3年の男子だけで行う旧暦7月1日の伝統行事。住民の減少とともに約30年前、地元老人クラブの開催を最後に途絶えていた。しかし、2022年度策定の村観光基本計画書による「修学旅行受け入れ実証実験」事業に、ハマムチの継続を願う平田集落の住民らの要望を反映。旅行の体験メニューに採用され、当時のハマムチを知る住民らが直接指導にあたった。
同校は12年の一貫教育による全日制。今回、初・中等部8年生(中学2年生に相当)が5~11日の旅程で来島した。
9日は2班に分かれた11人がハマムチに参加。「当時は小3が餌付け係で、中3は何もせず見守るだけ。上下関係があり、通過儀礼的な意味合いもあった」(集落住民)という行事だが、この日は女子生徒も参加し、和やかな雰囲気で作業を再現。「ヨーハレマイヨイ~」の掛け声の下、石臼の米を杵でする米粉づくりに挑戦し水でこね、バショウで包み、窯で蒸して餅が完成。集落前沖合で海釣りもあり、釣り上げた魚とともに鍋作りも体験した。
入谷冴映(さえ)さん(13)は「初めて来た奄美だが、昔は子どもたちだけで準備、行事に取り組んですごいと感じた」と話した。
指導にあたった益英勝さん(79)は7年前、約60年ぶりに平田に帰郷。「都会に出て忘れていた行事の作業も、子どもたちとともに思い出せた。これを機会にハマムチを多くの方に紹介していければ」と希望を述べた。
事業を計画した一般社団法人巡めぐる恵めぐるの新元一文代表理事(53)は「集落が継承を望む行事などを商品化することで参加者、受け入れ住民の全てが笑顔になれる。今後、地元学校など地域の継承につながれば」と期待を寄せた。
同旅行は村第三セクター元気の出る公社が今年9月に設立予定の旅行会社で扱う、地元住民参加型の旅行商品として検証される。