工事が再開された仮設道路の工事現場(11日、瀬戸内町嘉徳)
県が瀬戸内町嘉徳海岸で進める護岸工事計画で、護岸に使用するブロックを海岸へ運ぶ仮設道路の整備を4日に再開したことがこのほど分かった。計画見直しを求める一部住民らの抗議による中断で、道路工事の再開は約4か月ぶり。県大島支庁瀬戸内事務所建設課の松里智一朗課長は「一日でも早く工事を進め、地域住民の方の安全、安心を確保したい」と語った。
県によると、4日は現場確認と作業場に生い茂った草の伐採作業等を行い、9日に重機を搬入。伐採した草や仮設事務所の移設を実施し、10日は監視カメラの移設を実施。11日は測量作業などを実施した。
嘉徳海岸の護岸工事については、2014年年の台風による高波で海岸の砂丘が侵食被害に遭ったことを受けて県が護岸工事を決定。19年にブロック作製工事で着工し、23年2月には歩道整備のための工事準備に着手したものの、一部住民らの抗議活動を受け、工事がストップ。一部住民らが県を相手に公金支払いの差し止めを求めた訴訟は23年2月、鹿児島地裁が原告側の訴えを退け、今年4月の福岡高裁宮崎支部での原告側の訴えは棄却され、原告は最高裁へ上告した。
今年6月12日には嘉徳集落の栄茂男区長(74)らが鎌田愛人瀬戸内町長とともに大島支庁を訪れ、「工事の一刻も早い再開と早期完成を図ること」を求める要望書を松藤啓介大島支庁長に提出した。
護岸工事に疑問を持ち、毎日様子を確認しているという「奄美の森と川と海岸を守る会」の髙木ジョンマーク代表理事(51)は「護岸工事はユネスコが定めた世界自然遺産のルールに違反しているものが多い。持続可能な集落を守り、未来に残すためにも行政と住民との間で話し合いの場や対談の場が必要。工事が進んでしまっては取り返しがつかなくなる」と話した。一方、栄区長は「ようやく前進でき、地元の人たちも喜んでいる。約10年辛抱してきた。住人にもストレスがたまっている人もいる。集落の安心安全を守るために、ブロック設置の本工事までスムーズに着工できることを願いたい」と話した。
護岸工事は、検討委員会などの調査を経て、長さ180㍍の護岸西部などを計画。完成時期は未定。