植物に覆われた新宿泊棟完成

リゾートホテル「MIRU AMAMI」の新宿泊棟の外観と室内。森と共生する独立型ヴィラを目指している

外装に国産材、内装は炭化コルク
龍郷町芦徳のリゾートホテル

 龍郷町芦徳でリゾートホテル「MIRU AMAMI(ミル アマミ)」を運営する㈱ネストアット奄美(エン・バク・チム代表取締役)は新たな宿泊棟として計14棟のオリジナルヴィラ(戸建てタイプの宿泊施設)を完成させ、20日グランドオープンする。既存棟が「海ゾーン」に対し、新築棟は「森ゾーン」を掲げており、在来種や亜熱帯の植物を植栽し緑で覆っているほか、外装に国産材(国産スギ)、内装は炭化コルクを使うなど自然由来の素材にこだわっている。

 「奄美大島にできた新しい集落」をコンセプトにしている同ホテル。同社広報の島村智才(ちさ)さんによると、世界自然遺産の島での新築建物施工にあたり目指したのがコンクリートを使った基礎工事、大量の廃棄物ではなく自然環境負荷を最小化したサステナブルな工法の取り入れ。建物内の材料(原料)選定にあたっては環境負荷の少ない、リサイクル、循環、天然の素材を使用した。

 外装材は、国産スギを特殊な薬剤を用いることで「フランウッド化」させた木材。耐候性に優れ、防腐・防蟻性能を持ち、材料そのものの寿命を長くすることで、結果的に建築本体の低コスト・長寿命化に寄与するという。内装材は、樹皮からつくられたコルク。リサイクル素材の炭化コルクは耐候性のほか、調湿・断熱・吸音性能を持ち、快適な空間を作り上げている。

 敷地内にはスダジイなど高木、イジュやゲッキツなど中・低木、ヘゴやクワズイモなどの草本とさまざまな植物を植栽。背景の森と敷地に生育する植物が一体となり、山とつながるようなイメージを醸し出す。自然光を取り入れた室内は土の中や洞窟(どうくつ)のような内包的な空間を提供しており、「種子の発芽のような雰囲気を味わうことができたら。内面の美しさ、新しい感性を引き出すことができるのではないか」(島村さん)。

 建物の基礎は高床式を採用。山の地形の自然な水、風、生き物の流れを妨げず、循環する共生を大切にするため。建物の屋上にも緑化を施しており、植物が成長し生い茂ることで野鳥など生き物にとっても心地よい空間を目指しているという。

 シンガポール資本の同社。宿泊予約の受け付けにあたっては外資の強みを発揮して英語と日本語の両方で情報発信しており、海外の富裕層なども利用。1回の利用で5~6泊と長期滞在もみられるという。インバウンド(訪日外国人観光客)の受け皿になっているが、地元物産品の購入促進へレストランで黒糖焼酎の全蔵元の銘柄をそろえ、蔵元での購入促進を図っているほか、室内インテリアなどで地元工芸作家の作品を取り入れることで販売につなげている。