準絶滅危惧記載のハチ確認

嘉徳海岸で生息が確認された「ヤマトスナハキバチ」の標本(二宮正さん提供)
グンバイヒルガオの群生地がある嘉徳海岸の砂浜

県レッドデータブック
瀬戸内町嘉徳砂浜護岸工事「できるだけ配慮」

自然の防波堤の役割を果たした砂丘の浸食対策として護岸工事が計画されている瀬戸内町嘉徳海岸で、鹿児島県レッドデータブックでは「準絶滅危惧」として記載する昆虫のハチが確認された。施工を担当する県大島支庁瀬戸内事務所は同定した専門家のアドバイスを受けながら、生息への影響を配慮していく方針だ。

準絶滅危惧として記載しているのはハチ目ドロバチモドキ科の「ヤマトスナハキバチ」。北海道、本州、四国、九州と広く分布しており、鹿児島県レッドデータブックによると、県内での分布は県本土、種子島、屋久島、奄美大島。体長9~10㍉の黒色の狩りバチで、「腹部1~3節の後縁に黄帯がある。ヨコバイなど半翅類昆虫を狩る」。生息環境は砂浜。

嘉徳海岸で生息しているのを見つけたのは奄美市笠利町の内科医、二宮正さん(69)。同海岸でサーフィンを楽しむため訪れた際、砂浜部分に群生しているグンバイヒルガオ部分に営巣しているのを確認した。二宮さんは「最初に見つけたのは6月29日。写真や動画で記録した。グンバイヒルガオの下の砂浜に個別に穴(直径1㌢程度)を掘り、まるで月のクレーターのような状態だった」と語る。成虫が餌を運ぶ様子も確認したという。

ハチの種類を同定するため、地元の関係機関に問い合わせたが分からず、鹿児島市にある県立博物館へ。昆虫に詳しい専門家に標本を見せたところ、ヤマトスナハキバチと判明した。同定した同博物館の専門家は「鹿児島県のカテゴリー(分類)では準絶滅危惧だが、環境省カテゴリーは情報不足としている。生息する砂浜について分かっていないことが多く、嘉徳以外の砂浜でも生息している可能性がある。把握するためにも地道な調査が必要」と指摘する。

二宮さんは「鹿児島県のレッドデータブックには今後の保全対策で『砂浜海岸の保全』との記載がある。工事が影響を与えないよう生息環境を保全してほしい」と注文する。

同海岸での工事は、護岸に使用するブロックを海岸へ運ぶ仮設道路の整備を7月に再開。集落で長年暮らす住民は防災面から早期整備を求める一方、計画の見直しを求める動きがある。砂浜で確認された準絶滅危惧記載のハチについて瀬戸内事務所建設課の松里智一朗課長は「専門家の意見を参考にしながら施工にあたっては営巣時期に配慮するなど、できることをしていきたい」と説明する。工事の実施では、嘉徳海岸で生息が多数確認されている国指定天然記念物「オカヤドカリ」の保全対策、ウミガメが上陸・産卵する時期には海岸部での工事中断の配慮がとられている。なお、整備する護岸は完成後には前面を砂で覆い、アダンなどの植物を植栽することで動植物の生態を保全するとともに、景観の保全を図っていく。