金見海岸であった「イノー水族館」観察会=3日、徳之島町(提供写真)
講師の鈴木さん執筆・写真協力の「金見イノー水族館ガイドマップ」と「同カード」
【徳之島】奄美群島国立公園指定エリアの徳之島町金見(かなみ)海岸のイノー(サンゴ礁池)で3日、海の生き物観察会「イノー水族館」があった。未就学児・小中学生から一般まで家族連れ約30人が参加。鹿児島大名誉教授(元水産学部教授・理学博士)の鈴木廣志さん(70)を講師にサンゴ礁タイドプール(礁池)の生物多様性に触れた。
稀有(けう)な海岸の美しい自然環境が保全され、集落も丸ごと奄美群島国立公園(第3種特別地域)に含まれた金見集落。その環境を集落の存続・活性化にも生かそうと手作りイベントにも取り組む一般社団法人「金見あまちゃんクラブ」(元田浩三代表)が3年ぶり企画し、参加を呼び掛けた。
講師の鈴木さん(東京都出身・鹿児島市在住)は、元徳之島町地域おこし協力隊として2年間、金見集落に居住。あまちゃんクラブが2021年に作成の「金見イノー水族館ガイドマップ」と「金見イノー水族館・いきものカード」(32枚)=いずれも耐水性紙使用=の執筆・写真にも協力している。
観察会で参加者たちは、同水族館マップと同カードを手に、鈴木さんのガイドで潮流の緩急度など3エリアのポイントを観察。サンゴやナマコ、ヤドカリ、アメフラシ、ウニ、ルリスズメダイなどそれぞれの特徴や生息環境について説明を受けた。
埼玉県から天城町立西阿木名小学校に山海留学中の平野晴麻(はるま)君(4年)は「磯遊びにも行くが、森と同じで海にも生物多様性があることを知った。サンゴと思って触ったら動き、アメフラシだったのにはびっくり。徳之島にしかいない固有種なども調べてみたい」と目を輝かせた。
鈴木氏は「いろんな疑問点を持つことが勉強・学問の出発点だと思う。金見海岸はコンパクトな中に、いろんな生息環境があっていろんな生き物がいる。観察するには一番適したフィールドだと思う」と話した。
観察後のまとめと解説(金見公民館)では、「厳しい過酷な生息環境下にあっても、近い種属が互いに譲り合って生きることで生物多様性が育まれる。譲り合わないのは人間だけ。大人になっても譲り合いの精神を持ってほしい」とも付け加えた。
あまちゃんクラブの元田代表は「世界自然遺産に登録されて3年。遺産エリア(森林)にばかり目が向きがちだが、森は海につながり海が守られている。手つかずの自然環境が残っている金見の海。いろんな生き物たちがすめる生物多様性を守ってほしい。今後も計画したい」と目を細めていた。