奄美地域での開催からスタートした「かごしま食と農の県民条例」見直しに関する地域別意見交換会
「農政の憲法」とされる国の食料・農業・農村基本法の改正を踏まえ、県は「かごしま食と農の県民条例」の見直しへ動きだしており、先月の有識者意見交換会(第1回目)に続き、地域別意見交換会が7日の奄美地域から始まった。大島支庁会場のほか、群島内の各出先機関からwebで参加、見直しの考え方の説明に対し出席者からは規模拡大の難しさ、価格保証の必要性、資材高騰で畜産(子牛生産)経営の圧迫から飼料自給化急務などの意見が寄せられた。
食、農業及び農村の基本的な方向性を定める同条例(2005年3月29日公布・施行)の見直しにあたり、具体的な見直し内容の検討を進めるため、県内各地域の農業者や関係機関・団体等との意見交換を行うことになった。7か所で予定しており、最初の開催となった奄美地域では代表して19人(徳之島・沖永良部・与論会場を含む)が出席し、大島支庁、県農政部(農政課)の幹部職員らが加わった。
本庁農政課の後藤幹介課長が食と農県民条例の概要、国の基本法改正ポイント、県民条例見直しの考え方(案)について説明。この中では見直しの考え方で新たな規定として、▽農産物の輸出促進(海外市場の獲得)▽多様な農業者(担い手や認定農業者以外の地域・農地を守る農業者)▽農地の集団化(=集約化)及び適正化▽最先端技術(スマート農業)を活用した生産方式、最新の技術的な知見▽環境への負荷の低減促進(国際的な必要性)▽生産資材の安定供給(自給飼料の生産拡大)▽農福連携の推進▽鳥獣の農地への侵入防止及び食品等としての利用促進(ジビエ有効活用)―などが示された。
意見交換では出席者から「地域に適したスマート農業の推進を」「群島内の他離島に比べ奄美大島は農地があるものの、相続登記の問題などから集約が進まず耕作放棄地が解消されない。規模拡大をしたくても土地が動かない」「安定した価格につながることから有機農業を推進している。収入の安定が第一であり、最低価格の保証があれば新規就農につながる」「台風により船便が長期欠航すると青果物の販売に影響する。島外産に頼らず地場産を取り扱いたいが、特に地場野菜が少ない。農家の高齢化のほか、価格面から生活できないとして野菜農家が減少している」「畜産農家は子牛競り値の低迷もあり厳しい経営状況にある。飼料価格の高騰で自給化が求められており、自給粗飼料の大量生産の早期実現を」「特産品も海外への輸出が求められている。輸出促進は『農産物及び加工食品』としてほしい」などの指摘が挙がった。
価格面について後藤課長は「農産物を販売する小売業者からの意見では、消費者はなるべく安い価格設定を求めている。生産者の収益優先で価格を上げると売れなくなる可能性がある。生産、加工販売、消費者と価格設定の在り方を探る必要がある」と述べた。
見直しに向けたスケジュールは、9月にある第3回県議会定例会で意見交換会の経過報告を経て骨子(素案)の作成・検討、11月に第2回有識者との意見交換会、12月の第4回県議会定例会で条例骨子案説明、県民の意見公募を経て来年2月の第1回県議会定例会で条例改正案の提案・審議、3月の改正を目指している。