文田健一郎選手の金メダル獲得を祝福し、懸垂幕を掲げてたたえる職員ら=7日、天城町役場
【徳之島】つらい3年間を経て、悲願の金メダル獲得おめでとう――。パリオリンピック・レスリング男子グレコローマンスタイル60㌔級で悲願の金メダルを獲得した「徳之島・天城町3世」の文田健一郎選手。ゆかりの地・天城町の役場には7日、祝福の懸垂幕が登場した。同町は、文田選手が帰国して落ち着けば、父子での〝凱旋(がいせん)来島〟に期待を寄せた。
文田選手(山梨県出身)は、祖父の故・文田景造さん(元県職員)が天城町兼久出身。父・文田敏郎さんは全国高校レスリングの強豪・山梨県立韮崎(にらさき)工業高校レスリング部の監督。2018年8月には、韮崎工業高と、自らの母校でもある樟南高(鹿児島市)の両レスリング部員と天城町で合同合宿した。特訓の合間には、島内の青少年らも指導するなど絆を深めている。
2020東京オリンピック決勝戦は、同町役場にパブリックビューイングを設けて住民に開放。金メダルを確信していた中で得意の「反り投げ」を封じられ、「まさかの銀メダル」。「堂々の銀」ではあるが、文田選手の号泣会見に、住民たちも目頭を押さえていた。
金メダルを逸したあの悔し涙から3年。森田弘光町長はインタビューに「天城町民を代表して心から祝福を申し上げたい。世界王者として臨んだ東京の銀から、悲願の金メダル獲得。徳之島3世ということもあり、たくさんの感動と勇気をいただいた。今後ますますのご活躍と家族のご多幸もお祈りしたい」と話した。
同町の祷清次郎副町長も、文田選手の1回戦から決勝に至る全実況中継を見守った。悲願の金メダル決定の直後に、父・敏郎さんにSNSを通じ祝福した。「この3年間、文田選手本人が一番、つらい思いをしたと思う。徳之島ゆかりの選手の活躍は老若男女の全島民に勇気と感動を与えてくれた」。今後、落ち着いたら、ご先祖への金メダル報告など凱旋も打診する方針だ。
親戚(故・景造さんのいとこ)の文田隆三さん(79)=同町兼久=は「健一郎はいとこの孫。金メダルが決まった瞬間、『よくやった』と涙が出た。東京では若さで力任せだったような気がしていたが、今回は冷静に技術を駆使したのでは。会えたら『でかしたぞ!』と褒めてあげたい」と喜びを語った。