奄美大島でサンゴ白化

サンゴの白化被害が特に深刻な状況となっている奄美市名瀬の大浜礁原(興克樹さん提供)

今回の白化で死滅が確認された大型ハマサンゴ群体(興克樹さん提供)

海洋生研、調査で発生確認
海水温高く「局所的に深刻な状況」

 奄美海洋生物研究会(興克樹会長)は14日、8月に入り奄美大島島内各地で高海水温の影響によるサンゴの白化現象が発生していると発表した。リーフが発達し波が穏やかな礁原(しょうげん)などで確認されており、今年は台風の接近がなく海水温が30度以上と高くなっているため、局所的に深刻な状況という。

 調査が行われたのは、今月6~8日に大島海峡(瀬戸内町)12地点、、9日に用安礁池(しょうち)(奄美市笠利町)、12日に大浜礁池(同市名瀬)、国直礁池(大和村)。大島海峡以外は1か所ずつ。リーフの内側が礁原、より浜側が礁池。

 調査結果(速報)によると、特に深刻なのが大浜礁原。全体の90%以上のサンゴ群体が完全白化(褐虫藻(かっちゅうそう)が完全に抜けている状態)し、1998年の大規模白化を耐えた直径5㍍の大型ハマサンゴ群体も今回の白化で既に死滅しており、「大規模なサンゴ死滅が懸念される」。国直礁原では、9割以上のサンゴ群体に色が薄くなる程度の白化がみられ、うち半数は完全白化。2022年の白化で多くのミドリイシ属のサンゴ群体が死滅した太平洋側の用安礁池では、全体の7割程度のサンゴ(コモンサンゴ属、ハマサンゴ属)で色が薄くなる程度の白化が発生しているという。

 大島海峡でも、ほとんどのシュノーケリングポイント(12地点)で、浅瀬でサンゴ群体に色が薄くなる程度の白化が見られたが、完全白化群体は5%未満と少ない状態だったという。興会長は「大島海峡はリーフが発達しておらずリアス式海岸で、水温も1度程度低く白化しにくい環境にある」と説明する。

 同会によると、奄美大島で発生した白化では、13年、16年、17年夏期の白化では死滅群体は少なかったものの、18年夏期の白化では東シナ海側の礁原、22年夏期の白化では太平洋側の礁原で10~11月に広範囲で白化によるミドリイシ属のサンゴ群体の死滅が見られた。98年以降、数年おきに白化は発生、白化に耐性を持った群体が生き残り優占してきているという。白化したサンゴ群体の「全てが死滅することはないが、今夏の白化では、比較的波が穏やかな状態が続いている東シナ海側の礁原で白化によるサンゴ群体(特にミドリイシ属)の死滅が懸念される」としている。

 興会長は「白化自体は真夏の風物詩のようなもので、台風が接近すると海水温が2~3度低下し、白化による死滅を軽減する効果がある。今年の場合、海水温が上昇しより高い傾向にあるのは、晴れの日が続き日射量も影響するなど悪い条件が重なっている」と指摘。白化が全域に広がっている状況ではなく今後の気象条件によっては改善が見込めることから、興会長は「風評被害により観光への影響があってはならない。白化が深刻なところの一方、軽微なところもあり、今後もモニタリング調査や海水温データの分析を行い、適切な情報を提供していきたい」と語った。