奄美大島北部ではまとまった雨が観測され、サトウキビの生育に慈雨となっている
19日午前3時、沖縄の宮古島付近で台風9号が発生したが、発達した雨雲により奄美地方では18日夜から19日にかけて降雨があり、奄美市名瀬で19日午前までの24時間雨量で約60㍉を観測した。奄美群島の基幹作物サトウキビは高温と少雨で「ロール現象」(水分の蒸発を抑えるため葉が内側に巻かれる)の発生も一部で確認されているが、製糖関係者からは「まとまった雨により生育にプラスになるのでは」と期待する声が出ている。
気象庁によると、宮古島の約70㌔で熱帯低気圧が台風に変わった。勢力は中心気圧1000ヘクトパスカル、中心付近の最大風速18㍍、最大瞬間風速25㍍、中心の南東側280㌔以内と北西側165㌔以内では風速15㍍以上の強い風が吹いている。
台風9号は南西諸島付近で停滞後、次第に東シナ海を北上する見込み。奄美地方への直接的な影響はないとみられるが、雨量をもたらしており、24時間雨量は奄美市笠利27・5㍉、同名瀬56・5㍉と北部でまとまった雨量があった。南部でも沖永良部の最大値で25㍉を観測した。奄美大島の大型製糖工場・富国製糖奄美事業所の中山正芳所長は「笠利町の手花部や土盛などスプリンクラー(かん水施設)が設置されていないサトウキビほ場で若干、ロール現象がみられる。この雨は恵みの雨であり、生育が改善するのではないか」と指摘する。
サトウキビ農業が盛んな笠利地区の東シナ海側で、降雨が少ない時期に必要な農業用水を供給しているのが須野ダム(有効貯水量95万㌧、受益面積約340㌶)。同ダムを管理する奄美市土地改良区によると、19日午前現在の貯水率は70・2%で0・7%上昇と若干回復したものの、まだ70%台ぎりぎりの状態。70%を切ったら散水制限などが検討されるが、同区は「20日以降、貯水状況に基づいて利用制限などに踏み切るか市や県など関係行政機関を含めて検討していきたい」と説明する。
沖永良部でもまとまった雨量があったが、沖永良部サトウキビ生産対策本部は「降雨があり、台風による風の影響は現在のところそれほどない。知名町では屋子母や住吉にかけて降雨がなくロール現象が出ているが、今回の雨で持ち直しを期待したい」としている。