島民創作ミュージカル「えらぶ百合物語」

2年ぶりの島内公演で観客を魅了した島民創作ミュージカル「えらぶ百合物語」(17日、知名町あしびの郷・ちな)

2年ぶりの島内公演
子どもたちの熱演に感動

 【沖永良部】島民創作ミュージカル「えらぶ百合物語」2024凱旋公演(百合の会主催)が17日、知名町のあしびの郷・ちなであった。総勢23人の出演者が熱気あふれる演技や歌、ダンスを披露し、訪れた多くの観客を魅了した。

 昨年、えらぶ百合物語は初の島外(鹿児島)公演を実施。島内での公演は2年ぶりとなる。

 今回、地元の小学5年から高校2年までの劇団員17人と、5年前に主要キャストを務めた劇団OB3人が舞台に立った。新たな試みとして、ミュージカル留学生を募集し、島外の劇団で活躍する3人が仲間に加わった。脚本・演出・音楽は鹿児島県出身の演出家、松永太郎さん(50)が担当した。

 物語は、島の特産品「エラブユリ」が誕生した歴史をテーマに描かれている。アメリカへ短期留学した島の高校生ユリと、留学先で出会った友人リリイのルーツを、130年前の沖永良部島を舞台にたどっていく。

 ユリの曾祖母ナミとリリイの曾祖父アイザックの悲しい恋とその後の運命に観客は引き込まれた。劇中では、バンドによる生演奏に乗せて子どもたちがダンスや歌で躍動し、特別出演した沖永良部高校エイサー部や島内で活動するダンスグループのメンバーが会場を盛り上げた。

 昨年の島外公演にも出演したユリ役の冝喜心さん(16)=沖永良部高校1年=は「新しい曲やダンスにも挑戦し、これまでよりパワーアップしたミュージカルを披露できた」と笑顔。アイザックを演じた前田真輝さん(25)は「地元で公演できて本当にうれしい。本番を終えて、一緒に舞台に立った子どもたちのポテンシャルのすごさに驚いている」。5年前の公演と同じナミ役を務めた清村夕七さん(21)は「5年前は高校2年生だった。その時とは違う成長したナミの姿を見せるために練習に励んできた。もっと多くの人に感動を与えられるようこれからも頑張りたい」と話した。

 総合演出の松永さんは「多くのメンバーが昨年の島外公演を経験し、それをきっかけにさらに成長してくれた。最初の公演から13年がたち、劇団を引っ張っていくリーダーも育ってきている。これからがさらに楽しみ」と語った。

 

海を越えてミュージカルで交流

ミュージカル留学生として「えらぶ百合物語」に出演した左から東宏樹さん、向江史織さん、宮山來三さん(17日、知名町あしびの郷ちな)

宮山さん(大島高1年)
東さん(開陽高2年)
向江さん(加治木中2年)

 ミュージカルを通じて交流を図ろうと、大島高校1年の宮山來三さん(15)と開陽高校2年の東宏樹さん(16)、加治木中学校2年の向江史織さん(13)の3人が、17日に上演された島民創作ミュージカル「えらぶ百合物語」に出演した。

 ミュージカルは、2011年から島内外で全8回上演されている。今回、初めてミュージカル留学生として3人を迎えた。

 宮山さんは、龍郷町青少年ミュージカル「KIKUJIRO」のメンバー。東さんと向江さんは「えらぶ百合物語」の劇団OBで、現在は、えらぶ百合物語とKIKUJIROの総合演出を務める松永太郎さん(50)主宰の劇団ニライスタジオなどで演技を学んでいる。

 3人は、舞台上で存在感のある演技とダンスを見せ、エンディングで紹介されると、観客全員から大きな拍手が送られた。

 公演を終えた東さんは「中学生の頃に初めてこのミュージカルに出演したが、その時よりもメンバーの演技力が高くなっていて驚いた」。向江さんは「出演をきっかけに沖永良部島の良さに改めて気づいた。えらぶ百合のメンバーに負けないくらいの演技力を身に付けたい」。宮山さんは「とても楽しかった。沖永良部のメンバーがとても温かくて、人とのつながりの大切さを実感した。機会があればまた出演したいし、この経験を『KIKUJIRO』ミュージカルに生かしたい」と語った。