喜界、ゴマ被害深刻

台風10号の暴風域に入った喜界島では特産の白ゴマに倒伏などの被害が出て、減収率は70%と深刻な状況にある

サトウキビ減収率8%程度か 笠利町は5%程度
台風10号

 非常に強い勢力まで発達した台風10号の暴風域に入った喜界島では基幹作物のサトウキビや特産の白ゴマに被害が出ている。特に風に弱いゴマが深刻で、減収率は70%に達する見通しだ。同様に奄美大島北部も暴風域に入ったが、強風によるキビ被害はそれほどなく5%程度とみられている。

 喜界町では天候の回復を待って29日にサトウキビの被害状況を調査。町農業振興課、製糖会社の生和糖業、JAあまみ喜界事業本部が行った。同課によると、強風により島内全域で茎の倒伏、葉の裂傷、折損の被害を確認。東側の阿伝、嘉鈍地区で乱倒伏や折損が目立ち、荒木地区の海側では葉が枯れる潮風害(塩害)が見られた。

 収穫見通しに対する被害割合の減収率は8%としているが、潮風害は日にちが経過してから出ることもあり変動する可能性があるという。「減収率は今回だけでなく今後の台風など気象条件によっても変わるのではないか」(同課)

 同島の白ゴマは国内で日本一の生産量を誇る。香りなど品質の良さに着目し島外の複数の製油メーカーが栽培を委託。約250戸(収穫面積約150㌶)が取り組んでいるが、ほとんどがサトウキビなどとの輪作。夏場はほ場が空いた状態となることから、その間に種をまいて育て、収穫できるゴマは貴重な換金作物となっている。

 収穫期は9月上~中旬がピークで、同課によると、今回の台風に備えて収穫したり、播種(はしゅ)を早めた生産者もいたという。それでも被害が発生。高い割合となった減収率は倒伏、折れ、潮風害により黒く変色など。収穫後に外に干したものが雨にぬれたり、風で飛ばされる被害もあった。「風よけになる」として周辺に緑肥植物を植えているが、緑肥自体も倒伏しているという。島内ではゴマの播種は旧暦5月5日を目安に実施。台風被害を回避するため早めの播種も気温が25度以上にならないと発芽しないことから難しい状況にある。

 島内のゴマ生産量は約80㌧を記録した年もあったが、台風や大雨など気象条件に左右される関係で生産は不安定。台風がもたらした大雨被害により2020年は15㌧まで減少。気象被害がなかった22年は56㌧まで回復、昨年は15㌧にとどまり、今年は45㌧を見込んでいたものの、今回の台風被害により13㌧余りまで落ち込む見通しだ。

 奄美大島では奄美市笠利町で28日午前、最大瞬間風速31・4㍍を観測したが、同町を中心としたサトウキビ被害について富国製糖奄美事業所の中山正芳所長は「風が一方向(西南西)から吹き、吹き返しがなかったため、倒伏した状態で葉の破れも出ているが、茎が折れている折損はない。被害の割合としては5%程度にとどまっているのではないか」と語る。

 作型では、栽培期間が長いため高く伸びた状態にある夏植えが強風により倒伏しているが、茎に曲がりが出るものの、自然に立ち上がるという。倒伏が目立つ場所は農村環境改善センター下の東海岸側など。潮風害の方は、台風通過後も断続的に降雨があり心配ないようだ。