「野生復帰50%を目指す」と話す新屋惣センター長
開所した「奄美野生動物医学センター」(2日、奄美市石橋町)
奄美市名瀬石橋町に2日、野生動物の治療と研究を行う専門施設「奄美野生動物医学センター(略称=AWMC)」が開所した。野生動物に特化した施設は奄美群島で初。既に獣医師1人、動物看護師1人が24時間体制で傷病個体の対応にあたっており、2025年4月から獣医師3人体制に拡充し本格稼働する予定。年間の運営費は、民間の企業から寄付を募るCSR(企業の社会的責任)活動で賄われる。
同センターは1月に設立。獣医師の新屋惣センター長(31)(獣医学博士)と動物看護師1人が、けがなどを負って収容された野生動物の治療を行ってきた。これまでに傷病鳥獣30匹を受け入れ、現在はサシバ、ズアカアオバトなど10羽が保護され治療を受けている。検査・治療機器の整備などを進め、開所となった。
同所であった開所式には、安田壮平奄美市長、広野行男奄美群島国立公園事務所長など関係機関から約20人が出席。安田市長は「ロードキルの問題もあり、専門機関の開設は意義深い。野生動物の緊急治療の拠点になってもらいたい」と期待を述べた。
小学生の頃から野生動物の獣医師を目指し、20年越しの夢をかなえたという新屋センター長は「保護された動物の35%しか野生復帰できないのが現状。獣医療の力で復帰50%を目指したい」と意欲的に語った。
同センターは、25年3月から獣医師3人、動物看護師1人の体制に移行予定。現在の施設では手狭となるため、1年以内を目標に土地を取得し、2~3年以内に屋外施設の稼働を考えているという。
新屋センター長は「屋外施設が実現すれば、野生動物を動物園のように展示したい」との構想を明らかにした。
同センターでは、保護依頼や相談も受け付けている。ホームページの問い合わせフォームから。緊急時は電話090・3328・3167。