マングースの根絶を宣言する環境省自然環境局の植田明浩局長(左から2人目)
環境省沖縄奄美自然環境事務所は3日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)で「2024年度奄美大島におけるフイリマングース防除事業検討会」を開き、その後の記者会見で、同省自然環境局の植田明浩局長が根絶宣言した。歴史的な快挙が告げられた瞬間、会場を埋めた奄美マングースバスターズら関係者から大きな拍手が起こった。ハブ駆除のために1979年に導入されてから45年を経てマングースは奄美大島から姿を消した。
検討会には、有識者で組織された委員6人のほか関係機関から100人を超す参加があった。報道関係者は各地から20人以上が詰めかけた。
マングースの除去により18年4月に最後の1匹が捕獲されてか ら約6年間、捕獲ゼロ。23年度には4581基のわなが撤去された。生体探索犬やふん探索犬も島の中央部を中心に作業を実施したが、情報はなかった。自動撮影カメラは全島を網羅、579地点に設置されたがマングースが写り込むことはなかった。
この間、アマミトゲネズミやケナガネズミの混獲(死)が増加していく。23年度は、22年度(19匹)の約9倍となる244匹。奄美マングースバスターズの隊員からは、「見るに堪えなかった。心を鬼にするしかなかった」と複雑な思いが聞こえた。
除去に伴い、希少種は2013年頃から顕著な増加傾向を示している。アマミノクロウサギは龍郷町戸口周辺において、確認される生息メッシュが増加しており、空白地帯となっている奄美市街地との分断が解消に向かっていると根絶の効果も報告された。
検討委員会座長の石井信夫東京女子大学名誉教授は「25年かかり、ようやくたどり着いた。この間、希少種も回復し絶滅が避けられたことの意義は大きい。バスターズに敬意を表したい」と語った。
1999年から除去事業に取り組んでいる奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎保護管理企画官は、根絶への取り組みを評価する半面、「マングース3万2千匹を殺した。希少種を含む莫大な命が失われた。外来種問題が繰り返されないように努力を怠ってはならない」と警鐘を鳴らした。
最前線で除去事業を担った奄美マングースバスターズは山中のわなや資材の撤去を今年度中に終え、規模が縮小される。探索犬などの技術は、沖縄・やんばるにおける除去事業に活用され、徳之島などで駆除が続けられている特定外来生物シロアゴガエルの発見への活用も検討されているという。
2010年から生体探索犬のハンドラーを務めているという後藤義仁さん(49)は、「生態系を回復する仕事に関与できうれしく思う。子どもたちへの環境教育を通して、これからも奄美の自然保護に関わっていきたい」と話した。訓練次第で、シロアゴガエルの探索を行うことは難しくないとの見解も示した。