「フリマアプリ」に出品され、付着の可能性があるソテツ(一部加工しています)
外来カイガラムシ(和名・ソテツシロカイガラムシ)によるソテツの枯損被害は奄美大島北部を中心に拡大の一途をたどる中、「フリマアプリ」(インターネット上で個人同士がフリーマーケットのように商品等を売買できるアプリ)に奄美大島のソテツが出品されたことが明らかになった。被害が他の離島や本土など島外に広がるのを防ぐため、県など関係行政機関は虫が付着したソテツを持ち出さないよう呼び掛けているが、ネット上の売買で島外に流出する恐れがある。
出品者が値段を設定できるフリマアプリに奄美大島のソテツ出品を確認したのは一般社団法人日本ソテツ研究会の髙梨裕行会長。「情報に基づき出品を確認したのは7月あたり。画像で見たソテツの中には葉の付け根、幹の下の部分が真っ白でCAS(キャス=学名アウラカスピス・ヤスマツイの英語表記通称)が付着している可能性があるものもあった」と指摘する。
こうしたネット上での売買のほか、都市部のホームセンターなどで奄美大島から持ち込まれたとみられる小さなソテツの株も見つけたという。この株への付着は確認していない。髙梨会長は「物流を止めることはできないかもしれないが、出品するのなら指定している薬剤できちんと消毒して、それを証明してほしい。問い合わせたところ高圧洗浄をしたようだが、洗浄しても根の部分にCASは残り、肉眼ではなかなか確認できない」とし、島外に持ち出された場合、▽奄美群島内の他の離島など面積が小さな所は侵入すると一気にソテツ被害が広がり、ひとたまりもない▽九州のほか本州にもソテツはある。自生地・群生地の中には国指定天然記念物のソテツもあり、こうした文化財への感染が懸念される―として「出す方、買う方ももっと慎重になるべき」と警鐘を鳴らす。
注意喚起のチラシを作成するなどして、虫が付いたソテツを「持ち出し」「持ち込み」がないよう呼び掛ける行政機関も今回の事態に関心を示す。県大島支庁林務水産課の山之内治課長は「(植物防疫法に基づく移動規制)対象となっていないため強制できないが、疑わしい行為はやめてもらいたい。島外への持ち出しにつながるだけに自粛してほしい。登録薬剤であるマツグリーン液剤2やマシン油乳剤などを散布しての防除を働き掛けているが、ソテツシロカイガラムシだけを対象にした薬剤ではなく根絶には至っていない」と説明。島内住民一人一人の理解、被害への認識が改めて問われている。