トークで初動対応の大切さを語る関係者ら(10日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA)
「バイスタンダー」の重要性を訴える大島地区消防組合龍郷消防分署の森さん
臓器移植について説明する中村県立大島病院救命救急センター長
大島郡医師会主催の2024年度救急医療講演会が10日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)であった。市民ら約80人が聴講。救命救急の初動対応の大切さや臓器移植について理解を深めた。
講演会は9月9日の救急の日に合わせて同会が毎年開催している。今回は「あなたの手が…命を救う~いざという時に一歩を踏み出せますか!?~」と「もしもの時、あなたはどうしたいですか?~救急医療の先にある臓器提供という選択~」の二つをテーマに講演をした。
前半は大島地区消防組合龍郷消防分署の救急救命士で消防司令補の森一郎さんが講演。森さんは、大島地区消防組合管内の119番の救急要請から現場到着までの平均は10分30秒かかることを示し、昨年、奄美市で発生した単独事故の様子を記録したドライブレコーダーの映像をスクリーンに映し、市民らが協力して重傷者の救出と心肺蘇生、救急搬送されるといった一連の事例を通して、命を救うためにも、救急隊が到着するまでの応急処置を担う役割を持つ「バイスタンダー」の重要性を訴えた。
また、同組合が実施している応急手当の講習会や同分署が龍郷町の小中学校で実施している一次救命処置(BLS)の取り組みも紹介。前半の終盤で事例の当事者らを交えたトークがあり、「一般の方が心臓マッサージなどの行為をする際にためらいがあるが、その一歩を踏み出すことが大事。龍郷町のように子どもの頃からこうした教育がほかの市町村にも広がってほしい」との意見があった。
後半では県立大島病院救命救急センター長の中村健太郎さんが臓器提供について講演。最大7臓器、11人に提供可能な脳死臓器移植と最大3臓器、5人に提供可能な心停止後臓器移植の種類があることを説明。①国内でも約1万6千人が移植を待っている②移植待機中に亡くなる患者もいる③わが国における移植医療の普及が求められている―などの点を示し、2017年夏、同病院で臓器提供が実施されたことを機に、「臓器提供によって報われる命・救われる命があり、そして救われる家族がいることを知った」と語った。
また、同病院で扱った脳死臓器提供とその後の経過(1年後)の事例の紹介もあり、「臓器提供は終末期患者の最期の医師に応える医療。移植患者を救う唯一の医療。遺される家族の悲しみに寄り添う医療」と述べた。
奄美市のLINEや広報誌を見て聴講したという同市在住の女性(66)は「命を救うために躊躇してはいけないと感じた。万が一や自身のためにも救命講習会を受講し、また、臓器移植についても家族で話し合いたい」と語った。