豊年踊りの幕開け「綱切り」
旧暦の8月15日の「十五夜の日」にあたる17日、瀬戸内町油井集落(法島邦夫区長、29世帯48人)の豊年祭・敬老会が同集落公民館であった。台風13号通過後、14号が接近する中、この日は天候も味方した。会場には町内外から多くの人が詰めかけ、県指定無形民俗文化財の「油井の豊年踊り」が披露されると、会場からは大きな歓声が上がった。
豊年踊りはその年の稲作を終え豊作に感謝するとともに、来年の豊穣(ほうじょう)を祈願する同集落の伝統行事。集落内で収穫された稲わらでできた「綱切り」で始まり、「稲刈り」、「稲すり」、「米つき」など稲作の諸作業を芸能化し披露する。長い歴史を持ち、同町を代表する民俗芸能の一つに数えられ、1983年に県の無形民俗文化財に指定された。
祭りの幕開けとなる綱切りでは、ほほ笑んだ紙面を付けた役者と、荒ぶる異形の「シシ」が登場。多くのまわし姿の集落住民が参加する綱引きの合間に、鎌を持った「シシ」が綱を切断すると、会場からは大きな歓声が上がった。
「力飯」には、山梨県の大学4年生3人が飛び入り参加。学生最後の夏の思い出に参加した豊角(とよずみ)航平さん、赤沢颯太さん、雨宮彩人さんは「地域の文化に触れるとともに、伝統を守り続ける人たちの気持ちを感じることができた」と話し、「奄美は自然がきれい。また貴重な体験ができ良い思い出になった」と笑顔を見せた。
祭りでは無言劇「ヒギフッシュ」や、寸劇「玉露かな」も披露。演者のユーモアあふれる演技に、会場は大いに盛り上がった。
法島区長(73)は「集落の大イベントを開催できてうれしい。集落出身者や子、孫に支えられて成り立っているが、これからも続けていきたい」と話した。
油井豊年踊り保存会の岡野弘明会長(71)は「天気や参加人数を心配したが、多くの応援もあり開催できてうれしい。みんなが継承していかなければと思ってくれてうれしい」と語った。
油井集落出身で、奄美市名瀬から参加した菊地和義さん(78)、ワカ子さん(80)夫婦は「毎年楽しみで必ず参加している。子どもも初土俵を経験した伝統行事を残していってほしい」と話した。