県議会9月定例会は25日引き続き一般質問があり、平原志保議員=無所属、霧島市・姶良郡区=、寿肇議員=自民党、大島郡区=、宝来良治議員=自民党、鹿児島市・鹿児島郡区=、田畑浩一郎議員=自民党、南九州市区=が登壇した。県全体で約32億円の農業被害をもたらした台風10号について「激甚災害に指定される見込み」との答弁があり、指定された場合、資金貸し付けで支援措置が期待できる。
寿議員の質問に対し米盛幸一・農政部長が答弁。それによると、台風10号による被害額は農作物が奄美・熊毛地域のサトウキビのほか、喜界島の白ゴマや南薩地域のオクラなどの倒伏等により約11億7千万円、農業施設はビニールハウスの破損など約7億円、耕地関係ではのり面崩壊など約13億2千万円となった。
県では9月2日以降、被災した農業者の早期の復旧、経営再建を支援するため支庁などに経営や資金に関する相談窓口を設置、農業者からの相談に対応している。米盛部長は「国に対し被害報告を速やかに行った結果、国においては本県を含め全国の被害状況を踏まえ台風10号を激甚災害に指定する見込み」と説明。これにより災害関連資金が貸し付け当初5年間は実質無利子化されるなど支援措置が提供される見込みとした。
こうした被害への対応として農業保険(台風等の自然災害による収量減少を補償する農業共済と、対象作物を限定せず農業経営全体の収入減少を補償する収入保険)の加入状況が取り上げられた。答弁によると、2023年産サトウキビの加入状況は奄美群島42・2%、熊毛地域68・7%、同園芸作物が奄美17・5%、熊毛26・9%となり、いずれも熊毛地域が上回っている。米盛部長は「特に加入率の低い奄美大島や喜界島において昨年11月、農業共済組合と共に市町やJAなど関係機関を訪問し加入推進の協力を依頼した」と述べた。
肉用牛の子牛価格に関する質問があった。答弁によると、県内子牛価格は15~22年までは平均で60万円を超え概ね堅調に推移していたが、配合飼料価格の高騰や枝肉価格の下落等により肥育農家の収益性が悪化し、購買意欲が減退したことなどにより23年は約54万円、直近の今年8月は約48万円まで下落している。繁殖農家を対象とした経営安定支援では国において四半期ごとの全国の子牛価格の平均売買価格が保証基準価格の56万4千円を下回った場合、その差額を給付金として交付する肉用子牛生産者給付金制度が措置されている。
奄美大島における血液製剤の安定供給については房村正博・保健福祉部長が答弁。県では血液の安定供給の責務を有する県赤十字血液センターに対し必要な対応を求めるとともに、関係機関による検討会を開催し協議してきたが、房村部長は「昨年10月の第4回検討会において血液センターが提示した出張所の設置運営にかかわる多額の費用の検証、悪天候時のブラッドローテーション(血液の返品再出庫)運用や実施に要する費用負担の意見があった」と報告。こうした意見を踏まえ、血液センターにおいて現在、出張所設置等の費用削減の検討、奄美大島における悪天候時のブラッドローテーションの運用手順の作成などが進められているとした。房村部長は「血液センターにおける検討状況を見極めながら各関係機関との協議を継続していく」と述べた。
このほか県立高校において県外生徒を積極的に受け入れている高校の現状、こうした高校への県の補助や助成の質問があった。地頭所恵教育長の答弁によると、地域みらい留学制度に参画しているのは古仁屋(瀬戸内町)、屋久島、南大隅、喜界、種子島の各高校。この制度を利用して学んでいる生徒数は今年4月時点で5校合計51人。補助・助成について地頭所教育長は「市町村において少子高齢化や人口減少への対策としてさまざまな地域振興施策を行っており、地域みらい留学もその一つとして市町村の判断で実施している」として県が一律に行うものではないことから、県の補助や助成はしていないと説明した。