県立大島病院で大規模災害訓練

大規模災害訓練で治療にあたる医師や看護師ら(25日、県立大島病院)

トリアージなどの手順確認
陸自の参加も

奄美市名瀬の県立大島病院(石神純也院長)で25日、2024年度大規模災害訓練を実施した。同病院の職員や奄美看護福祉専門学校、奄美高校などから約210人が参加。奄美大島近海で地震と津波が発生したことを想定し、傷病者の受け入れや治療の優先順位を決める傷者別判別(トリアージ)、処置などの手順を確認した。

同院は奄美群島唯一の災害拠点病院に指定されており、災害時には傷病者の積極的な受け入れ、他医療機関との連携、医療の円滑な提供などが求められている。訓練は同院の災害対策マニュアルや、指揮命令系統の確認や関係機関との連携を目的に毎年1回、9月9日の救急の日に合わせて9月に開催している。

この日の訓練は奄美大島近海で深さ約10㌔を震源としたマグニチュード7の地震が発生。奄美市名瀬で震度7の揺れを観測。8㍍の津波が到達したとの想定で訓練を実施した。訓練には医師・看護師約165人や陸上自衛隊奄美駐屯地の隊員や、模擬患者役として奄美高の生徒や看護福祉専門学校の学生らも参加した。

午後1時に地震が発生し、地震発生の一報を受けて院内の被害の確認と対策本部を設置。病院内の設備を管理する会社の職員が非常用の発電機と投光器を各所に設置しつつ、同時進行で傷病者受け入れのためロビーを整理した。午後2時2分に院長が傷病者受け入れを宣言し、同12分頃に負傷者を搬送した陸上自衛隊奄美駐屯地の救急車が到着。玄関前で患者に▽緑▽黄色▽赤▽黒のタグをつけ、処置の優先度を確認。症状の重い傷病者(赤色)から順に担架や車いすでロビーや各処置エリアに約30人の患者を運び込み、医師や看護師らが患者の処置をしながら対策本部への報告とホワイトボードに状況を記入した。

左足の裏にガラスの破片が刺さり、傷口ができたという傷病者役で訓練に参加した奄美高の森元千智さん(15、衛生看護科1年)は「医師や看護師さんのチームワーク、職員一人一人が患者さんのためにできる対応をしていたのですごいと感じた。将来の夢は看護師。日本各地で災害が起きているが、高校生のうちから自分ができることは何かを探して、看護師として働く際に患者さんのためにできることを考えるきっかけになった」と話した。

1階のフロアでトリアージ区分の赤(最優先治療)エリアのリーダーを担当した医師の松元陸さん(29)は「豪雨災害等もあり、身の引き締まる訓練。自衛隊にも一緒に訓練に参加していただけることがありがたい。負傷者を受け入れる中で検査や動線など細かい点が決まっていないところがある。そうしたところも今後詰めていきたい」と語った。

同院の中村健太郎救命救急センター長は「5月26日の県の総合防災訓練を経て、奄美は孤立する可能性が高く、いかに災害拠点病院として最初の48時間をどう乗り越えるのかが今回の訓練の鍵。県の防災訓練を受けて電子データを使ったやりとりなど新たなやり方や取り組みも実践した。この訓練で得たものは大きい。成果を来年に向けてより良い診療体制について考えていきたい」と話した。