県議会9月定例会は27日、引き続き一般質問(最終)があり、松山さおり議員=自民党、奄美市区=、上山貞茂議員=県民連合、鹿児島市・鹿児島郡区=、犬伏浩幸議員=無所属、姶良市区=、鶴薗真佐彦議員=自民党、薩摩川内市=が登壇した。松山議員が質問した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録に伴いユネスコ(国連教育科学文化機関)からの四つの勧告(要請事項)対応状況について、利用ルール運用や調査などにより遺産としての価値の維持に向けた取り組みが説明された。
原口義明・環境林務部長が四つの要請への対応状況を答弁。その中では、希少種等のロードキル対策=アマミノクロウサギの侵入防止柵の設置、ドライバー向けの啓発キャンペーンや奄美市道三太郎周辺などでの夜間の低速走行など利用ルールの運用▽河川再生=2022年に基本的な考え方やプロセスを示す包括的な河川再生戦略を作成し、河川工作物が遺産価値に与える影響を把握するため現在、有識者ヒアリングや自然環境調査▽森林管理=林業事業者と調整しながら伐採地を分散するなど自然環境に配慮した管理を進めるとともに、森林伐採が遺産価値に影響しないよう調査▽観光管理=保護上重要な地域である奄美大島の金作原、徳之島の林道山クビリ線における利用ルールの運用を行うとともに利用の分散化を図るため、奄美自然観察の森や世界自然遺産奄美トレイルの整備活用―といった取り組みを挙げた。
松山議員は保護対策の一方でアマミノクロウサギ個体数の増加による奄美大島、徳之島での農作物被害の状況を再質問。米盛幸一・農政部長は「23年度の被害額は対前年度比132%の約1千万円となっている」と答弁。国の特別天然記念物に指定されていることから「県では環境省、鹿児島大学等と連携し対策の検討を進めてきた」と述べ、22年3月にタンカンの幼木をビニール資材で保護する方法や、ほ場周辺を専用の柵で囲う侵入防止柵を内容とする農作物被害対策マニュアルを作成し、その内容の周知を図るなど農業とクロウサギの共生を図る取り組みを推進しているとした。
県内では3か所認定(うち2か所は奄美)されている自然共生サイトの認定(民間の取り組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域を国が認定)に向けた今後の取り組みについて原口部長は「今年7月にセミナーを開催したほか、認定が期待される地域の掘り起こしを行っているところであり、その結果を基に生物多様性の保全上、優先度が高い区域に対し自然共生サイトの認定に向けた支援を行う」と答弁。具体的に専門家を招聘(しょうへい)し区域内の生態系情報の調査やモニタリング計画の策定を行うなど自然共生サイトの認定申請を伴奏支援するとした。
寿議員に続き松山議員も奄美群島における血液備蓄所再設置を取り上げた。房村正博・保健福祉部長は同じ答弁を繰り返し、松山議員は台風など悪天候時のブラッドローテーションなど血液供給体制の備えについて県当局の認識を再質問。房村部長は「血液製剤の安定供給では特に悪天候時の影響があり、平時も事故があるかもしれない。そのために大島病院が中心になるが、ある程度余裕を持って血液製剤を用意しており、悪天候時はそれよりやや多めに血液製剤を用意して対応している」と説明したうえで、悪天候時のブラッドローテーションの検討について「天候が悪くなると予想される前にあらかじめ多めに本土から血液製剤を取り、天候が回復した後、もし血液製剤が余った場合にはそれをまた本土の方に送り返して血液センターが本土の病院で活用するという取り組みを念頭に置いて検討を進めている」と述べた。
答弁を受けて松山議員は「奄美群島において人命にかかわる喫緊の課題が血液製剤供給体制。知事においては各種機関との協議を進めて血液製剤の安定供給に向けた方向性を早急に示してほしい」と要望した。