あやまる岬観光公園内の群生地でも外来カイガラムシ被害が拡大している
奄美市笠利町のあやまる岬観光公園には貴重なソテツの群生地があるが、外来カイガラムシ(和名・ソテツシロカイガラムシ)による枯損被害が及び、拡大している。幹の中に入り込み新芽が出ても青々とした葉が黄色や白に変色、枯れた状態。指定された薬剤を散布しても効果が見通せない状況だ。
群生地は「あやまるソテツジャングル」。入り口には旧笠利町が設置した案内看板があり、「奄美各地には、たくさんのソテツが自生しているが、ほとんどが山や赤土に群生しており、ここあやまるのソテツは砂地に群生している規模としては奄美一であろう」との記載がある。群生地には遊歩道が設けられ、散策しながら奄美を代表する植物の景観を楽しめるものの、被害により幹も白くなり多くの葉が枯れたような状態。
観光公園指定管理者によると、群生地の被害が確認されたのは今年6月頃。「最初は観光客などが散策するコース以外の部分で葉の裏が白くなっているのを見つけたが、みるみるうちに被害が広がった。防除で指定されている薬剤を散布しても手に負えない」と深刻さを訴える。「幹の中に入っているからだろう。新芽が出てもやられている。青々とした葉が残っている箇所もあるが、いつまで持つか」。群生地の保全は厳しい状況にある。
観光公園を担当する笠利総合支所産業振興課も定期的に現地を訪れ被害状況をチェック。「気温が上昇するようになってから被害が一気に拡大したようだ。県など関係機関にも状況を伝えている」
群生地の被害を食い止めることができない中、昨年末に来島し種子(ソテツの実のナリ)や子株を採取、奄美大島以外の地域で取り組む域外保全によって遺伝的多様性の確保に着手した一般社団法人日本ソテツ研究会(Japan Cycad Society)は、域内でできる保全の取り組みを提案する。まだ株として生存しているもの(の一部)を別の場所に移して確保するもの。
同研究会の栗田雅裕事務局長によると、幹部の一つ「例えば太さ10~30㌢、長さ1㍍程度」を丸太のように切り出して、殺菌処理を行い外来カイガラムシを除いた上で風通しの良い暗所などに保管する方法。生きている幹なら数か月もすれば発根することから、それを踏まえて「温室内など人為的管理ができる場所での植え付け」を提案。順調に育てば被害後の群生地に戻せる。管理者や行政機関に検討を求めており、実行によって域内での再生手段となる可能性がある。