徳之島町では下久志地区を中心に誘殺数が増加、幼虫も確認されたミカンコミバエと寄主果実の除去作業(いずれも資料写真)
県は4日、徳之島町下久志(しもくし)及び徳和瀬に設置している調査用トラップ(わな)で、果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエの成虫を誘殺、下久志では幼虫の寄生を確認したと発表した。誘殺数は18匹と多い中、寄生・定着の防止へ関係機関はグアバなどミカンコミバエが特に好む植物の適切な管理を呼び掛けている。
経営技術課によると、今月2日、同町下久志2地点及び徳和瀬1地点に設置したトラップで雄成虫の誘殺を確認したもの。内訳は下久志の1地点16匹(9月30日に3匹)、同2地点1匹、徳和瀬1匹。1日単位での誘殺数で最近多かったのは2020年6月の屋久島町で10匹、22年9月の薩摩川内市下甑島の10匹で、今回の数はそれを上回る多さとなっている。徳之島での今年度の誘殺数は22匹目、県内における同年度の誘殺は8市町村で今回を含め合計32匹。
寄生果の確認は、先月30日に下久志で雄成虫3匹の誘殺を確認したことから、寄主果実の調査に取り組み採取後、5日間以上保管。その結果、2日、下久志の誘殺地点周辺のグアバ果実で幼虫の寄生を確認したもの。幼虫の確認は今年度初めてだが、同課によると、昨年度は徳之島町と瀬戸内町で幼虫を確認しており、いずれも幼虫確認は1回だけだった。
今回の確認を受けて国、県及び町等が連携して国のマニュアルに基づき初動対応(トラップ・寄主果実調査、誘殺板・ベイト剤防除)を実施。下久志については今回、幼虫が確認された地点から半径1㌔㍍円内の不要な寄主果実(パパイア、かんきつ類、グアバなど)は関係者による除去を行う。同課の中村育生課長は「初動対応をしっかりと行っていきたい。今のところ誘殺地は限定的で、地区が絞られている。寄主果実の除去については住民のみなさんの了解により進めている。理解・協力をお願いしたい。処理の仕方、不安などがあったら役場や県の機関(大島支庁)に相談してほしい。落下した果実などは放置したままだと腐敗し、寄生しやすくなることから適切に処理していくことが大切」と指摘する。
農林水産省門司植物防疫所は「トラップで誘殺しているのは雄の成虫であり、雌も飛来していると考えられることから産卵した可能性がある。定期的に調査を行っており、今回急に増えたが、それまでは数が少なく定着にまで至っていないのではないか」とし、「熟した果実、落ちた果実は卵を産みやすい。危ない物として注意が必要で、早めに摘み取ったり、回収してビニール袋に入れて処分してほしい」と対応を求めている。
ミカンコミバエが定着し誘殺数が急激に増えると、奄美大島のように緊急防除が実施され、移動規制によりタンカンなどが島外に出荷できず生産農家は大打撃を受ける。JAあまみ徳之島事業本部果樹部会副会長でタンカン専門部会長の松本幸徳さん(62)は「今回幼虫が確認されたが、この世代で抑え第二世代を出さない取り組みが大事。グアバは庭木や野生化(野良)したものもあるが、そろそろ終わりの時期。タンカンは摘果の時期で、摘果後の果実を畑に放置してはならない。島ミカンは熟期に入っており、不要なものは除去するなど管理を徹底したい」と語る。松本さんらタンカン生産者も下久志、母間など周辺で行政機関とともに果実の除去作業などに協力している。枝を含めた除去、果実を放置せず適切な処理の徹底が実行できるかが発生を抑えるポイントとなりそう。