発達障がい児の体系的評価学ぶ

発達障がい児の体系的な評価法について話す辻井正次・中京大教授(5日、龍郷町りゅうがく館)

個別支援計画作成へ
あまみ療育ネットワーク

 発達障がいの子どもと当事者家族、支援者でつくる民間団体「あまみ療育ネットワーク」(白浜幸高会長)は5日、龍郷町りゅうがく館で「エビデンス(根拠)に基づくアセスメント(評価)・支援プラン作成研修」を開いた。奄美大島島内で児童発達支援施設を運営する7事業所から保健師・保育士など35人が参加。保育士などが利用できる体系的な発達評価尺度となる判定方法を学んだ。今後、ICT(情報通信技術)を活用した個別支援計画の作成につなげる。

 研修は、発達障がい児者の支援と、支援システム開発を行うNPO法人「アスペ・エルデの会」=愛知県=が実施主体。日本財団の助成を受け今年度からスタートさせた。奄美大島での開催は、沖縄県宮古島市に次いで2か所目となる。

 講師は、同会理事長の辻井正次・中京大学教授(発達臨床心理学)と、浜田恵・同大心理学部准教授。両氏は、他者との会話のやりとりが難しい自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを例に、発達障がいの特性やアセスメント法を解説した。

 浜田准教授は、幼児期のおもちゃを使った遊びを通しての行動観察から「SAPLI」という客観的評価方法を説明。辻井教授は、子どもの「適応行動」(年齢相応の当たり前の行動・社会的スキル)がどれだけできているかを評価する「TASP」という発達評価シートを示した。

 辻井教授によると、ASDの子どもが支援を受けないまま小学校に入学し、学校生活に適応できないことで学級崩壊につながる例もあり、やがて学業不振から不登校に陥るという。

 こうしたことを防ぐには保育所や幼稚園の役割が非常に大きく、「できるだけ早い段階で客観的なアセスメントを行い、情報の正確な伝達と個別的な支援の提供を行う必要がある」などと話した。

 参加した施設管理者からは、「施設で使っている評価シートは複雑で使いづらかった。遊びや行動観察から客観的な評価ができるのであれば利用してみたい。効果的な支援につながり、保護者の希望になれば」といった声が聞かれた。

 2種のアセスメントを用いた評価は、参加事業所を利用している就学前の1~6歳児を対象に、保護者の同意を得て行い、年末にかけ保育・指導要録を作成する。来年2、3月頃、個別支援計画の事例検討会を開く予定。