真剣な表情で前田さん(右)と質疑するインターンシップ生たち
国の伝統的工芸品である「本場大島紬」の後継者を育成するインターンシップが7日、龍郷町浦の前田紬工芸で始まった。県の委託事業で、図案と締め機の技に憧れる学生や社会人5人が来島し実習。未来の職人を目指し、実際の工程を見学し、伝統工芸を紡ぐスキルを体験した。
伝統的工芸品後継者の育成と確保を目的に県が主催。事業は2023年度に始まり、業務は日本の文化や職人技の動画制作などを手掛けるニッポン手仕事図鑑(東京本社)が受託。23年度は鹿児島市で本場大島紬、川辺仏壇の後継者育成に取り組み、1人が就業、1人が内定を受けている。
今年度のインターンシップ生は、奄美大島での就業を前提に全国26人の応募の中から審査と面接を通じて、県外の学生や社会人の女性5人が選ばれた。特に後継者の育成が急務とされる図案と締め機の希望者で、確保を急ぐ産地の期待も高いという。
日程は2泊3日。この日は、同社専務取締役の前田圭祐さん(37)が工場を案内し、図案の仕分け作業を体験したり、移住に向けた座談会で地元住民と交流するなど、製品や地域に理解を深めた。
神奈川県で暮らす社会人の岸涼香さん(23)は、大島紬の繊細な工程や技に憧れ応募した。「締め機は力のいる作業で難しさもあるけど、できる自信はある。地域に貢献できる職人になりたい」と意気込む。インターンシップ生から正社員雇用を計画する前田さんは「固定賃金での雇用は損失も大きいが、誰かが殻を破らなければ手遅れになる。雇用は遅いくらい。将来の指導者を見据えて育ててあげたい」とインターンシップ生の作業に目を向けていた。
8日は同社で個別面談、9日は移住者先輩との座談会なども予定している。県販路拡大・輸出促進課の牧元禎治課長は「後継者不足は大きな問題。(雇用にない)4人の情報も産地に共有しながら、県の伝統工芸品を守り、次代につなぐ取り組みを続けていきたい」と話した。
11月には奄美市名瀬の田畑絹織物でも事業実施を計画している。