「毒蛇ハブ」と安全に共生を

研究者2氏を招いてあったハブに関する出前授業=9日、伊仙中


不気味な毒牙に戦々恐々

世界自然遺産、生物多様性に大切
専門家2氏 伊仙中で出前授業

 【徳之島】蛇族学術研究者ら2氏を招へいした「徳之島のハブの調査とヘビの種類」の出前授業が9日、伊仙町立伊仙中学校(寿山敏校長)の1年生43人を対象にあった。生徒たちは本物のハブ(冷凍)の解剖も観察。注意を怠らずその毒牙から身を守りつつ、世界自然遺産の島の生物多様性を構成する一員との「共生」の大切さを再認識していた。

 県が実施している住民の生活区域周辺での咬(こう)傷被害の防止、人とハブの棲(す)み分けに関する奄美群島振興交付金事業。「ハブ解剖」を盛り込んだ同出前授業はNPO法人徳之島虹の会が3年前から受託実施している。

 同日の講師は、奄美大島・徳之島のハブなどの現地調査・研究を長年続けている▽東海大学名誉教授・竹中践(せん)氏(74)=北海道札幌市と▽一般財団法人・日本蛇(へび)族学術研究所研究員の森口一氏(67)=群馬県太田市=の2人。伊仙中側は,郷土学習の時間(2時間)を充てた。

 両氏は、島内の某校内に近年出没したハブの画像なども示し「木にもよく登っているため、下だけでなく上にも注意を」などとまず安全対策を教示。ハブのほか島内に生息するヘビの種類(ヒメハブ・リュウキュウアオヘビ・ガラスヒバァ・ハイ・アマミタカチホヘビ・ブラーミニメクラヘビなど)の有毒・無毒性など特徴も交え解説した。

 ハブ標本の解剖・繁殖状況調査に関しては気になる報告も。卵巣の排卵後の「黄体」と、黄体が縮んだ「白体」で分かるというその年の産卵数調査結果について「徳之島のハブは7~8年前までは産卵数がどんどん増えていた。だが、今では(個体数を駆除して)減らさなくても減少。繁殖の調子が悪い」とも明らかにした。

 授業の感想で生徒の樺山莉愛(るのあ)さんは「ハブは怖いが(解剖した)その中はあまり人間と変わらないと思った。島から絶滅することはないとは思うが、ハブも世界自然遺産の大切な一部。気をつけながら大切にしたい気持ちになった」と話した。

 毎年2回、来島調査を続けている竹中氏は「毒蛇なので安全に接することが一番重要。ハブをむやみに殺せば良いというものでもない。撲滅ではなくハブと人間の共生が大切」。森口氏も「外来種は別だが、世界情勢からして種の撲滅はあり得ない。生物多様性の中で、その一本が抜ける(絶滅する)と生態系がガラガラと崩壊する可能性も。世界自然遺産の島の生物多様性、大切な自然環境を守りつつ、咬傷者は減らさなければならない」と述べた。