クロウサギ食害

アマミノクロウサギによる食害を防ぐため、タンカン幼木をビニールで覆う方法は効果が指摘されている(資料写真)

 

 

 

大和村が全体の7割
「侵入させない工夫で共存を」

 

 

 県がまとめた野生鳥獣による農作物被害で2023年度の状況をみると、奄美地域ではイノシシ被害(2353万9千円)が最多だが、これに次ぐその他獣類(1465万1千円)にはアマミノクロウサギ、ノヤギ、ネズミ類が含まれる。大半がクロウサギで約1千万円に及び、生息する奄美大島と徳之島の中で被害の7割を大和村が占める。

 国の特別天然記念物・アマミノクロウサギによる農作物被害は、タンカンの樹皮やサトウキビの芽をかじる食害。23年度の被害額は県議会9月定例会一般質問で報告され、982万7千円に上った。前年度は742万5千円で増加している。

 市町村別でみた場合、被害の最多は大和村。タンカン栽培が盛んな福元地区で起きており、同地区は奄美で最も高い湯湾岳(標高694㍍)の麓に広がる丘陵地で、クロウサギの生息地に果樹園が造成された。生産者は「侵入防止の柵を張り巡らしても生息を示す穴が果樹園内に掘られている箇所もある。巣穴はあちこちで見掛ける。柵の網も定期的にメンテナンスが必要」と語り、幼木に施している行灯(あんどん)状にしてビニールで覆う方法は食害防止に効果があるという。

 村産業振興課によると、同地区での被害は23年度が面積6・7㌶、量29・3㌧、額は727万円8千円となった。クロウサギ被害額のほとんどを占める。前年度は6・2㌶、30・8㌧、680万3千円だった。

 クロウサギの生息地ということもあり福元地区で最初に確認された被害は、生息数の増加で奄美大島の他の地域(奄美市名瀬小湊の安脚場、瀬戸内町、龍郷町など)でも報告されるようになった。同市農林水産課によると22年度(19・6㌶、17万8千円)から被害報告を受けるようになり、23年度は31・2㌶、24万8千円まで増えた。住用地区の果樹園でも被害が報告されているという。

 徳之島の方は徳之島町農林水産課によると、被害状況は23年度が0・15㌶、16万2千円、22年度が0・15㌶、19万6千円。奄美大島に比べるとそれほど多くない。サトウキビの食害では萌芽(ほうが)がかじられているが、「芽はまた出てくるため、タンカンの樹皮被害に比べるとそれほど深刻ではない」(同)

 こうした状況を受けて県は22年3月に農作物対策マニュアルを策定。他の獣類と異なり捕獲などが原則禁じられているため、タンカンの幼木をビニール資材で保護、ほ場周辺を柵で囲うといった方法に取り組むよう勧める。環境省は「駆除するのではなく、うまく侵入させない、かじられないようにすることで野生生物との共存を図ってほしい」と呼び掛けている。