「子どもの失敗経験を共有することが大事」と話す髙橋聡美さん(13日、奄美市役所)
悩みを声にできない子どもに大人はどう対応したらいいのか――。子どもの心に寄り添うためのコミュニケーションスキルを学ぶ「子どものSOSの受け止め方講演会」が13日、奄美市役所であった。10~20歳代男性の自殺者が国・県との比較で極めて高い同市が、自殺対策事業として開催した。教育関係や療育事業所、一般参加者など約70人が参加し、深刻な問題に向き合った。子育て中の保護者からは「不登校の子どもにどう対応したらいいか分からない」といった悲痛な声も聞かれた。
「子どもの心に寄り添うために~気持ちが伝わる言葉の力」と題して講演したのは、2児の育児をしながら、大学で医学博士号を取った髙橋聡美さん(56)。精神看護学の教授などを務め、現在は一般社団法人髙橋聡美研究室代表。メンタルヘルスの講演や児童・生徒を対象にしたSOSの出し方授業などを全国で行っている。
髙橋さんは子どもたちへの授業で、「心の傷は口にしないと見えない」「諦めないで3人目までの大人に伝えて」と語り掛けているという。
受け止める側の大人には、「自分の経験の枠の中に子どもを入れようとしないで」と訴え、子どもの声をオウム返しで〝まるっと〟受け止め、相手の情景を詳しく聞く「傾聴」に徹することを求めた。
「社会的自尊感情」は褒められることで高まり、叱られると低くなるため、「アドバイスしない・ジャッジしない・決めつけない」ことが大事だと話し、失敗した時は、「やり直せばいい」「できなくても自分は自分」と思えるよう、失敗体験を共有し、「基本的自尊感情」を育んでほしいと続けた。
子どもの不登校に悩む親からの質問には「子ども自身も悩んでいる。子どもの人生だが、親の葛藤する力も試されている。専門機関に相談し解決への糸口を見つけて」とアドバイスする場面もあった。
母親と一緒に受講した高校生(17)は「中学の時、仲のいい友達の自殺を経験した。突然のことだった。高校でも、2年間で10人が辞めていった。道を踏み外した人もいる。身近で深刻な問題」と話した。