衆院選は27日の投開票が迫り終盤を迎えているが、県内4選挙区のうち最多の5人が立候補している鹿児島2区は、5候補者全てが奄美入りした。遊説では街頭演説を繰り返し、政党や自身が掲げる政策をアピール、奄美の振興に決意を示した。各陣営は終盤、大票田の谷山地区(鹿児島市南部)を重点にしていく。こうした選挙活動だけでなくデジタル技術を活用、動画投稿サイトなどSNSで積極的に情報発信する陣営もみられる。
2区に立候補したのは、参政党新人で生命保険代理店個人事業主の矢竹ゆかり氏(61)、共産党新人で元県議の松崎真琴氏(66)、無所属前職で元知事の三反園訓氏(66)、日本維新の会新人でコンサルティング企業経営の辻健太郎氏(38)、自民党前職(比例九州)で党2区支部長の保岡宏武氏(51)=届け出順=。
奄美での選挙活動は、矢竹氏は23日に奄美大島入りし24日まで2日間滞在。空港がある奄美市笠利町を皮切りに瀬戸内町まで移動し演説で政策を訴えるだけでなく、住民の意見を直接聞くなど積極的に交流を図った。「医療や子育て支援策の充実を求める声が印象的だった。離島で暮らすことが国防につながる。誰か1人でもいることで中国など外資の侵略を防ぐことができる」とし、「離島で暮らしている人々の声を大事にして、暮らし続けられるような政策を進めなければならない。そのためにも奄美で参政党の議員をさらに増やしたい」と語った。
松崎氏は公示日当日と最も早く奄美大島入りし、翌日を含めて奄美市名瀬を中心に街頭演説を徹底して政策の浸透を図った。比例九州ブロックにも重複立候補している関係で2区の選挙区内だけでなく、宮崎、熊本の両県でも活動。奄美への政策は「奄美の島々が美しい平和な島々に」を掲げ、▽農業、漁業、伝統産業、観光など多様な地域の特性を生かしながら、地域交通を守るとともに、運賃や輸送費への助成制度を拡充するなど、離島のハンディキャップを解消する具体的な支援策強化▽医療機関や介護事業所への国の支援強化―など示している。
三反園氏は17日午前中奄美大島入りし、翌日の午前中まで滞在。島内遊説には奄美市議会議長をはじめ市議が同行。街頭演説には自民支持層の団体らも駆けつけた。無所属のため政見放送ができないが、無党派層の多い谷山地区でも「草の根」活動を徹底し一人一人に声を届け、浸透を図っている。「第2の故郷、魅力輝く奄美群島へ」を掲げた政策は、▽物価高の是正。台風などの自然災害のたびに生鮮食料品がなくなる事態の解消▽畜産やサトウキビなどの生産農家が営農を継続できるようにするため資金面での支援、相談体制の充実、スマート農業の推進―など。
奄美市出身の辻氏は日帰り日程で18日に奄美大島入り。政策の柱であるテクノロジー(科学技術)活用により「日本の未来を鹿児島(奄美)から創る」は選挙戦略にも生かしている。SNSなどでの情報発信で、受信状況など反応を把握しながら支持の広がりを重ねる。一人一人に語り掛けるように発信している政策は、「離島の奄美群島こそ最先端のテクノロジーが必要。それによって新しい日本を奄美から創ることができる」「生成AI(人工知能)を用いた行政システムの効率化、緊急時における物流網遮断に迅速に対応できるドローンネットワークの構築」など。
4人の候補者が奄美大島のみの来島となった中、保岡氏は喜界島や徳之島にも足を運び精力的に街頭演説を重ねた。奄美選出の自民党県議や地元議員が同行し、各首長が激励した。演説では「奄美のことは保岡に任せてほしい」として、祖父・父と親子3代による奄美群島振興開発特別措置法との関わりを強調。具体的な政策は、▽奄美出身者の冠婚葬祭等における航路・航空路運賃の軽減▽奄美ブランドの国内外発信強化と沖縄との連携強化▽外国人観光客誘客のためのwi―Fi環境整備や通訳の強化―で、各島の重点施策も示している。