笠利町で6年ぶり群島業祭

6年ぶり開催となった第32回奄美群島農業祭の表彰

 

奄美群島農産物の沖縄向け出荷について講演した琉球大学農学部教授の杉村泰彦氏

 

 

 
発展と「稼ぐ力」向上誓う
沖縄向け出荷「安定的供給重要」

 

 

 「人と自然と地域が支えあうみんなで創る農村社会」をテーマに6年ぶりとなる奄美群島農業祭が7日、奄美市笠利町の笠利農村環境改善センターであった。32回目の開催。優秀農家や農業振興功労者などの表彰、事例発表、記念講演があり、台風等の気象災害や資材費の高騰など厳しい生産環境にあるものの、亜熱帯の温暖な気候などを生かし地域農業の発展と「稼ぐ力」の向上を誓った。

 群島農業祭は3年に1回開催しているが、2021年度が新型コロナ禍で開催できなかったため、18年度の天城町以来となった。農業者や関係機関・団体から約200人が参加した。

 主催した奄美群島農政推進協議会の隈崎悦男会長(喜界町長)が開会あいさつし、開催地代表は奄美市長あいさつを大山茂雄・農林水産部長が代読。大島郡区選出の寿肇県議が来賓祝辞をした。

 表彰式後の事例発表は、同市住用町出身で農林水産省の官僚から転身し、奄美大島にUターン後に合同会社「AMAMIバリュープロデュース」を立ち上げ、笠利町でバニラビーンズの栽培に取り組むとともにスイーツやドリンクなどが味わえるカフェをオープンしている林晋太郎氏が行った。スイーツの原材料だが、化学香料のバニラエッセンスに対しバニラビーンズは植物由来という違いがあり、亜熱帯気候の南西諸島(奄美・沖縄)では農薬や肥料が必要なくコスト労力を抑えることができるほか、加工後1年は保存可能というメリットがある。

 林氏は「課題として収穫まで2~3年かかるが、その間、インドネシアなど販路開拓に取り組んだ。規格外品は加工処理できる。特産品(お菓子)づくりにも挑戦したい」と語り、「バニラをもう一つの選択肢にすることで奄美農業の価値が向上するのではないか。奄美に役立つことができるよう、価値をプロデュースしていきたい」と述べた。

 記念講演は「沖縄市場からみた奄美群島農産物の魅力・出荷の可能性について」と題し、琉球大学農学部教授の杉村泰彦氏が行った。今年度から始まった改正奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)により農林水産物の輸送コスト支援は沖縄向けも対象になったが、杉村氏によると、沖縄県の小売り環境は共働き世帯が多い関係で、買い物先はスーパー、量販店、コンビニで84%に達するという。中でも大規模店に集中していることから「安定的に供給できるかが重要になる。スーパー・量販店への供給にはまらない限り、沖縄出荷のメリットは薄いのではないか」と指摘した。

 沖縄での奄美産農産物の優位性については、▽船便が毎日運航(毎日入荷)▽沖縄産と出荷時期がずれる―を挙げ、実際に出荷されているバレイショを例にロットの大きさ、品質の安定、確実な選果など「計画的な出荷が求められる」と述べた。

 杉村氏は「時代は『国消国産』であり、奄美と沖縄が共同で出荷産地となる『亜熱帯青果店』の実現」を提案。東京、大阪など国内の大規模市場へ両産地が戦略的に提携していく取り組みを呼び掛けた。

 3年後の次期群島農業祭は喜界町で開催される。