大和村国直集落では高台の公園に37人が避難した(17日、国直サンセットパーク)
大和村は17日、津波を想定した防災訓練を実施した。訓練は集落ごとに行われ、11集落で452人が参加、避難経路、要支援者への配慮などを確認した。自主防災組織、消防団、奄美署などが避難誘導にあたった。災害対策本部(総務課)では、訓練で生じた課題や参加者からの意見・要望を集約し対応していく。
訓練は、「午前8時半、奄美大島近海でマグニチュード8の地震が発生、大津波警報が発表された」との想定。午前8時35分、全集落に防災無線避難放送が流された。国直集落では自家用車や徒歩で、山手のサンセットパーク(展望公園)に37人が避難、うち2人は要支援者だった。
移住して半年だという60歳代と50歳代の夫婦は「経路を確認するため徒歩で避難したが、道路が塞がれた場合も想定しておかなければならない」と話し、一緒に避難した住民と言葉を交わしていた。
村消防団の才原貴大(たかひろ)さん(38)は「訓練では、個別避難計画などに基づいて要介護者の家を確認した。2022年1月の(フンガ・トンガ火山噴火による)津波警報発表時には、住民が周辺に声を掛け合って協力した。集落で命を守り合う関係を作り災害に備えたい」と話した。
消防団員らを前に、男女共同参画の視点の必要性を訴える印南百合子さん(17日、大和村防災センター)
訓練終了後、同村思勝の防災センターでは防災セミナーが開かれた。30年にわたり男女共同参画の活動を行っている印南百合子さん(元大島支庁長)が、「誰一人取り残さない防災~防災になぜ男女共同参画の視点が必要か~」と題し講演。大規模災害時の避難所運営で女性の意見が反映されにくい現状を示し、「防災会議の委員に女性を3割以上起用」などと提言した。消防団員、住民など約60人が参加した。
セミナーは、内閣府男女共同参画局アドバイザー派遣事業により開催。村は、2023年度策定の「第2次男女共同参画推進総合計画」で、「男女共同参画の視点に立った災害対応」を掲げている
印南さんは、災害時には性別による支援ニーズの違いがあると説明。東日本大震災の避難所運営では女性の意向が反映されず、支援要望の高かった生理用品や哺乳瓶用消毒剤などが十分に対応されなかったと話した。
要因として、管理運営者が男性のみのため、企業から提供希望があっても「緊急時にそんなものは必要ない」と断っていた例があったなどと説明した。
復興の段階では、「男性は有償で屋外作業、女性は無償で(1日7時間)炊き出し」といった固定観念に縛られ、生活再建への経済問題も生じやすかったと話した。
避難所では女性や子どもに対する暴力や性被害もあったが、非常時であることや男性優先の考えから被害の声は封じられてきたという。
印南さんは「意思決定の場に女性が少ないことが問題の根底にある。性別を理由にした固定化した役割分担意識が災害時に顕在化する」と課題を挙げ、「防災会議の女性委員の割合を3割以上にする」「女性リーダー育成のため、男女共同参画の視点から研修し、男性の理解促進を図る」などと提言した。
30歳代の女性消防団員は「消防団、自主防災組織、役場の担当部署など、備蓄品や避難所運営について女性目線で考えなければならないと気付かされた」と話した。