二巡目のスタートとなった「知事とのふれあい対話」(円内・塩田康一知事)=23日、徳之島町生涯学習センター
【徳之島】塩田康一知事と県民が直接意見交換する今年度「知事とのふれあい対話」(県主催)が23日、徳之島3町を対象に徳之島町生涯学習センターであった。「農業の『稼ぐ力』の向上について~物価高騰等が与える農業への影響と対策~」をテーマに推薦と農家12人が発表。希少野生生物の食害を防ぐ共生対策、飼料や資材高騰と子牛価格低迷にあえぐ肉用牛生産の現状などを切実に訴え、県施策を求めた。
塩田知事の県民とのふれあい対話は、県民が安心できる県政の推進などを目的に1期目就任後の2020年10月徳之島各町(天城町・徳之島町・伊仙町)を皮切りに開始。昨年の霧島市で43市町村を一巡。二巡目も徳之島地区が対象(今回から3町合同)に。地域の課題など要望に基づき今回からテーマを設定。推薦と公募の意見発表者12人と傍聴者合わせて約100人が来場した。
タンカンなど果樹生産者は「最大の課題は肥料など資材の高騰とアマミノクロウサギによるタンカン樹の食害。イノシシ防護柵はすり抜け、電気柵もすぐ慣れてしまう」と新たな県対策も要望した。塩田知事や当局(大島支庁)側は地元町を通じた網目の小さい防備柵設置事業の活用もアドバイスした。
有機農業に取り組む生産者は「同JAS認定の産地化推進には専門的な指導員が不可欠。徳之島農業の発展のため育成(増員)に力を入れてほしい」とも。バレイショ専作からサツマイモも試作して販路を沖縄県に求めている農業法人代表は「品質面で高評価を得ている」と同県との連携強化も提案。知事らは奄振法でも「沖縄県との連携」を重視。特殊病害虫アリモドキゾウムシ対策には喜界島での根絶事業の現状にも触れた。
そして家族協定で畜産を営む農家は「今の畜産は夢や希望が持てない状態。子牛1頭あたり平均価格35万~45万円。基本的な経費は50万円で経営が成り立たない」。子牛価格低迷の背景に「(本県は)和牛オリンピックで日本一を2回も獲ったが、全国や外国からは注目されず知名度が低い」とも指摘してPR活動の強化も要望。知事らは本県産黒毛和牛ブランド「鹿児島黒牛」の取り組み状況なども示した。
会場質疑では「有人国境離島の防衛には人口対策・農業振興が大事。タンカンなど品目を〝国防作物〟に位置付けるべき」など意見もあった。