労働力確保へ農福連携

労働力確保で農福連携の在り方などが報告された大島地区青年農業者会議

Iターン者参入、土地確保障壁
大島地区青年農業者会議

 奄美大島と喜界島を対象とした2024年度大島地区青年農業者会議が26日、龍郷町りゅうがく館であった。大島地区農業青年クラブ連絡協議会(元井雄太郎会長)の主催。意見発表、事例発表があり、作物収穫など繁忙期の労働力確保へ農福連携(農業×福祉)の在り方、移住のIターン者の就農では土地の確保が障壁となっていることが報告された。

 両地域の青年農業者や指導農業士、関係機関・団体が一堂に会し、発表などを通して意見交換することで、農業経営発展や地域農業の振興に役立てようというもの。農業青年クラブ連絡協の事務局は県大島支庁農政普及課。同課によると、64人が出席した。

 青年農業士による発表は、意見発表を「自分らしさを生かした農業経営」と題し奄美市の山越織江さん、事例発表は「農業×福祉 農福連携」と題し龍郷町㈱あまみあぐり代表取締役の田中基次さんが行った。北海道旭川市出身の山越さんは東京農業大学卒後、関東に就職したが、移住のチャンスがあり「自然が豊かで北海道とは真逆の奄美大島で農業がしたい」と決意し移住。奄美市の農業研修(2年間)を経て就農3年目。同市推奨作物のカボチャ(露地)、ハウス5棟でパッションフルーツを栽培している。

 山越さんは作物が手元に届くまでのストーリーとして農作業の様子をSNS(インターネット上の交流)で情報発信したり、自身の農園のロゴマーク・キャラクターのデザイン、コウシャマンなど伝統野菜の知名度を高める取り組みなど進めている。労働力確保では試験的に農福連携を利用しているという。奄美大島で生産された野菜や果物の地元・北海道での販売を目指している。

 田中さんは、あまみん(就労継続支援B型)を20人の障がい者が利用している中、農福連携による作業の受託、余剰作物を利用した食品加工(ジェラート、ハーブティー)や蒸留(アロマオイル、肥料にして畑に戻しての循環型農業確立)などの取り組みを報告。先進事例として県本土(大隅半島など)の農福連携の現状も紹介し、今後については「農福連携を核に相性の良い業態を取り入れていく。農泊、作物生産の強化、自然環境保全を進め、持続可能な産業として人にも自然にも優しい企業を目指す」と述べた。

 発表後は、出席者の質問に答える形で交流。島内には福祉的就労事業所が28か所ある中、利用者の確保について田中さんは「特色を表に出し、取り組んでいることを本人だけでなく支援者にも伝えること。作業内容は安全が第一」と説明し、スタッフと利用者のコミュニケーションに力を入れる一方、事業所同士の横のつながりについては「利用者の奪い合いが背景にあるからか弱い」と指摘した。また受託する農作業では、草刈りなどハードと軽めの二つのタイプに分けて工夫しているとした。

 山越さんは移住者が農業に取り組む上で土地の確保の難しさを挙げ、「信用がないから畑が見つからない。行政など関係機関で就農できる土地の確保や整備があれば、参入障壁が減る」と語った。

 発表や意見交流を受けて大島地区指導農業士会の大海昌平会長が助言指導。「新規就農でIターンの場合、ゼロあるいはマイナスからの出発であり、厳しい状況にある。手を広げすぎるとコストが負担になるだけに、自分の力に応じて一歩一歩、着実に取り組んでほしい」「あまみんの取り組みで規模拡大については、無駄な作業はなくすなどそぎ落とす視点も必要ではないか」と述べた。