地方創生成功事例に伊仙町

石破首相、所信表明演説で紹介
子育て環境充実「合計特殊出生率日本一実現」

10月の衆院選後初の本格的論戦の場となる第216臨時国会は29日、石破茂首相の所信表明演説が行われたが、看板政策の地方創生で成功事例の一つとして伊仙町が紹介された。首相は出産や子育て環境を充実させたことが、「合計特殊出生率日本一を実現した」と指摘した。

首相は演説で三つの重要政策課題への対応を挙げ、①首脳外交を経た今後の外交・安全保障政策②日本全体の活力を取り戻す③治安・防災―について説明。②の中で起動する「地方創生2・0」に触れ、宮崎県小林市の取り組み「フランス語かと思わせるような地元の方言を使うなど、ユニークな我が『まち』紹介動画作成」紹介後、伊仙町について言及した。

この中では「伊仙町では、町長が集落を回り、町の財政状況を丁寧に説明した結果、高齢者から、子どもたちのためにもっとお金を使ってほしいとの意見が出た。出産や子育て環境を充実させ、2003年~12年までの間、合計特殊出生率(一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとした時の子どもの数に相当)日本一となる、『2・42』、『2・81』を実現した」と述べた。

首相は「これらを決して、一つの『まち』の物語にとどめてはならない。日本中の同じ課題を抱えている皆様と、これまでの地方創生の成功事例から学び、『産官学金労言』で英知を集め、我が『まち』を輝かせるため、共に取り組んでいく」との決意を示し、デジタル技術の活用や地方の課題を起点とする規制・制度改革を大胆に進めていくとした。

首相の紹介について伊仙町の大久保明町長は「集落を回った時に地域のリーダー的な高齢女性から寄せられた言葉。『孫のためにお金を使ってほしい』『孫を呼び戻すことができるよう集落にもっと住宅をつくってほしい』との内容だった」と振り返り、家賃も安い1戸建て新築住宅を整備した結果、「本土や奄美大島から子育て世帯(出身者・Iターン者)が移住するようになった」と語った。

町内には8小学校、3中学校があり、児童生徒数の減少で統廃合のアドバイスがあったものの、大久保町長は「学校をなくしたら集落から子どもがいなくなる。移住の受け皿となる住宅整備や出生祝い金増額など子育て支援策は小規模校がある地域こそ重点的に投資(予算投入)してきた。それにより児童生徒数が増えた」と述べ、「伊仙町だけでなく他の2町も子育て支援策に熱心で、その結果が徳之島の合計特殊出生率の高さ(全国上位)につながっている」と語り、「東京一極集中是正のためにも本来なら国の施策として進めてほしい」と注文した。