地域医療の未来を考えるシンポジウム。現役の医師らから課題が提起され、今後の取り組みに向けたスタートとなった(8日、アマホームPLAZA)
奄美地域の医療の現状を学び、今後の取り組みを考える「第1回奄美地域医療シンポジウム」が8日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)であった。奄美大島の医療提供体制の問題点を共有、医療と福祉の充実に向け医師らが意見を交わした。シンポジウムでは、救急医、勤務医、開業医、行政それぞれの立場から現状が語られ、今後目指すべき医療の在り方についてさまざまな提起があった。市民など約250人が出席、奄美地域が抱える医療の課題を共有する場となった。
県立大島病院、鹿児島大学病院地域医療支援センター、奄美市の共催。奄美地域で相次ぐ開業医の閉院、診療科の休診などの現状や、顕在化しつつある医師の高齢化などの課題を共有し、次回以降の開催で「持続可能な地域医療」の実現への取り組みを図る考え。
嶽﨑俊郎・医療支援センター長(鹿大)が、「離島へき地医療を支える医療人育成の取り組み」として基調講演。へき地・離島医療を担う医師育成のため、2006年から始められた医学部の地域枠制度について解説。現在、20人の枠があり、離島へき地で2年間勤務することを出願の条件としていることなどを説明した。嶽﨑センター長は「ほとんどが県内に残るため、離島派遣などで融通が利く制度となっている」などと評価した。
中村健太郎・県立大島病院救命救急センター長は、奄美群島における「航空医療」の重要性を訴えた。08年から運用されている奄美ドクターヘリの運航実績を説明し、夜間搬送を自衛隊などに依存する現状を課題として挙げた。
その上で奄美群島が目指すべき医療システムについて、島根県隠岐諸島の夜間救急搬送を担う「消防防災ヘリ」や、医師を現場へ搬送する「ドクターデリバリー」など、体制強化には代替輸送手段が必要と訴えた。
平島修・名瀬徳洲会病院副院長、原純・みんなの診療所長(龍郷町)、相星壮吾・名瀬保健所長らが登壇したパネルディスカッションでは、客席の医師らから「島で完結できる医療を目指すべき」「血液備蓄所の再設置には何が必要か」などといった意見が次々と出された。
相星所長は「住民が主体的に関わり、県などに向けアピールし続ける必要がある。少しずつでも前進し続けることが重要」と語った。