地域共生社会は今 福祉の連携③

子どもたちへの発達支援と共生プロジェクトについて語る、あまみ療育ネットワークの白浜幸高さん

障がいではなく特性
「サポートでイベント参加」

 福祉フェスタとの融合で地域共生を目指す新たなプロジェクトの実行委員会参加団体の一つに、あまみ療育ネットワークがある。2018年立ち上げの任意団体だ。現在の会長は㈱和月の理学療法士・白浜幸高さん(53)。

 目指しているのが療育に困難性を抱える子どもとその家族、関わる事業所や公的機関の「連携」。対象としている子どもはゼロ歳児から18歳(高校生)まで。「肢体不自由、知的などだが、今一番多いのは『発達障がい』と呼ばれる皆さん」と白浜さん。療育(発達支援)について白浜さんは「障がいのある子どもが自立した生活を送れるよう、それぞれの発達の状態や特性に応じて支援すること」と説明する。現在、取り組んでいる活動は「子どもたちを中心として公的機関ではできないようなこと」

 2024年7月にはこんな研修会を開催した。「障がいのある『僕』と里親との暮らし」。福岡県から発達障がいのある当事者を招き、里親問題を勉強し合う場を設けた。障がいのある里子から、また里親の立場から大切にしていることをリアルに伝える講演になったという。奄美の療育を支える事業所の勉強会として2月28日にも研修会を計画。医療の専門家を講師に迎え「発達の特性について
 小児科外来で話している事」がテーマだ。こうした研修会だけでなく、当初は昨年8月に予定していたが台風で延期になったスポーツ体験教室(ボッチャ・フライングディスク)開催も計画している。1月28日の予定だ。

 ▽緩く

 「公的機関ではなく、あくまでも任意団体だけに、気楽に緩くを心掛けている。家族や療育現場からやりたいこと、学びたいことを取り入れて活動することで連携でき、それぞれの顔が見える関係が構築できるのではないか。当事者意識(発達に関し支援が必要な子どもやその家族)を大事にしながら、つながることができれば」(白浜さん)

 研修会開催でも参加を強制しない。「こんな研修会をします。もし賛同できるなら参加しませんか」。会費は年間千円だが、「払わなくても興味があれば参加してみませんか」。活動にあたっての予算もほぼ使っていないという。関係する財団に申請し、そこからの助成金などによって賄っている。「学校やPTAなど教育関係団体、地域も子どもに関する活動なら支援しよう、協力しようという雰囲気がある。『子どもを地域で育てている』という風土はまだ残っているのではないか。ありがたいこと」と話す白浜さんだが、子どもたちや家族との関わりで心掛けているのが早期介入だ。

 小学校の高学年など学年が進むにつれて顕著になる不登校などの行動。感情のコントロールがうまくできないといった悩みにも直面する。就学前、あるいはまだ小学校の低学年の時期。その子の「特性」をまず知ることから始めて対応している。

 「障がいではなく特性と理解している。早く気付き、早く介入することで適切な支援が可能になる。祖父母などの理解がないとして隠したがる親も多い。障がいではなく特性という認識があれば地域の理解も生まれるのではないか。そのためにも研修会などの活動に家族の皆さんにも参加してもらえるよう継続していきたい」。理学療法士、リハビリの専門職の白浜さん。リハビリと療育はそれぞれの視点から補完しあう関係にあると認識している。「目に付きやすい運動などの機能障がいに対する支援だけでなく、社会や家族との関わりを重視して子どもが生活全体の中で成長していく視点を持つことで、より包括的なサポートが可能となれば」

 ▽共に過ごす

 地域共生社会の実現を目指し、障がい者・要介護者・介護者及び一般住民を対象に計画しているイベント。療育ネットも参加する方針だが、白浜さんはこう考える。「今のところブースを設けて、療育や障がいがある子どもたちについて説明していこうとは思っていない。地域の人々を含めてみんなが集う場所に、療育が必要な子どもたちも一緒に過ごせる空間が創出できたら」

 提案したいイベント内容に「スタンプラリー」があるという。「参加している他の子どもたちと一緒にブースを回り、何かに参加することでスタンプを押してもらう。全てを回ってコンプリート(スタンプが完全にそろう)するとか。こうしたイベントに特性を持った子どもたちが参加するには配慮が必要だ。療育に関わる私たちが一緒になれば他の子どもたちと共に過ごし、共に楽しめるようにできるのではないか」

 大勢の人が集う場などへの参加。家族はどうしても避けてしまうという。集団を見て子どもが興奮して奇声を上げることがあるからだ。ブースの出品物などを触って壊してしまうことも考えられる。子どもたちにとって楽しい夏祭りなどのイベントも、こうした行動への警戒から家族は出掛けることをためらいがち。「抑え込むのではなくサポートすることでイベントに参加できるようにしたい」。これも共生社会の一歩ではないだろうか。(つづく)