ワークショップで制作されたナリムチ
奈良県から来島した宿泊客も参加・体験によって奄美大島の伝統行事への理解を深めた(提供写真)
古民家の再生活用など奄美群島の宿泊施設「伝泊」運営を通して伝統的・伝説的な集落文化と建物を次の時代に伝えるまちづくりに取り組む奄美イノベーション㈱(山下保博代表)は12日、奄美市笠利町にあるまーぐん広場・赤木名で「ナリムチづくりワークショップ」を開いた。小正月を前に奄美大島の北部で伝わる伝統行事に宿泊する観光客と地元住民が制作から携わり、交流の場にもなった。
新年を迎えるにあたり伝泊では正月飾りの門松もシイノキやマツ、タケなどを使う奄美独特のものを取り入れており、ナリムチも各施設に飾っている。広報担当の楠瀬陽平さん(30)によると、今年は飾るだけでなく制作を楽しむワークショップを企画した。
花に見立てる4色(白、赤、黄、緑)に着色した餅はスーパーなどから購入したが、枝に飾り付けるブブ木(リュウキュウエノキ)はスタッフの親の庭にあった木を使い、枝を設置する板の土台は施設の補修などを担当するメンテナンススタッフが準備。餅を飾り付ける状態にした。ワークショップ開催(参加費無料)にあたっては、ナリムチの歴史やいろんな飾り付け方法があることを分かりやすく紹介する資料も作った。
ワークショップには10組31人が参加。そのうちの1組(両親と祖母、幼児2人の三世代5人)が奈良県から来島し佐仁の古民家宿泊施設を利用した観光客。楠瀬さんは「初めての体験という物珍しさもあり、三つ制作していた。子どもたちだけで制作し、楽しそうに餅をたくさん付けていた」と振り返り、「奄美に来て伝統行事を体験できたことは貴重な思い出になったのではないか」と語った。
他の参加者は6組(親子連れや夫婦で)が地元笠利町、3組は名瀬などからで、ナリムチづくりのワークショップを通して観光客と地元住民が会話するなど交流の場にもなっていたという。
制作されたナリムチは参加者が持ち帰ったほか、伝泊の各宿泊施設や物産コーナーなどに飾っているが、それぞれQRコードを通してワークショップでの制作の模様が動画で見られるようにしている。楠瀬さんは「宿泊した観光客の皆さんが動画で奄美の伝統行事に触れることができる。これからも体験によって奄美の文化を伝えると同時に継承していく役割も果たしていきたい」としている。