天城町は全14集落で自主防災組織を確立。総合防災訓練には約700人が参加して意識を喚起し合った=19日、同町松原上区公民館
【徳之島】天城町総合防災訓練(町主催)が19日午前、「奄美群島太平洋沖南部地震・大津波警報発令・火災発生」を想定してあった。住民や関係機関合わせ約700人が参加。町内全14集落の自主防災組織がそれぞれ自主企画した各避難所(自治公民館など)への避難・訓練メニューで交流。「いつでもどこでも起こりうる大規模災害」から命を守る「自助・共助」意識を再喚起しあった。
災害基本法の規定に基づく、災害発生時の各関係機関・地域住民などとの緊密な連携による避難所の開設や情報収集・伝達、救急・救助、消火など災害応急活動の迅速・適切実施―などの一環。全集落の自主防災組織を挙げた同総合訓練は昨年1月、7年ぶりに復活継続。組織・活動の現状など抜きん出た防災行政の成果ともなっている。
訓練開始時間のみは事前告知されないまま午前9時過ぎ、Jアラートや防災行政無線を通じ訓練緊急放送。町独自の防災アプリでも一斉に緊急配信した。
公民館施設が臨海部(海抜約4~5㍍)の松原西区集落のみは河川(港川)を境に、避難所を高台にある天城クロスカントリ―パークと松原上区公民館に分散。避難住民たちが集った計14の避難所では、町当局や地区消防組合職員らを講師にAED(体外式除細動器)、搬送、初期消火、炊き出し訓練や防災講話、発電機試運転などが展開された。
うち松原上区自治公民館には85歳を頂点に老若男女の住民や関係機関合わせ約80人が参加。段ボールベッドや避難所用プライベートテントの組み立て設営、非常食展示、発電機試運転なども実施。講師の町企画財政課長補佐の福田光宏さん(38)は「災害時には役場職員もいないと想定して住民の皆さんが主体的に動き、自分の身は自分たちで守る自助・共助の重要性と、防災グッツも紹介させていただいた」
松原上区集落の福和輝区長(63)も「まずは自分たちの身の安全を図って避難。(発災時の)一次避難所の設置・運営などは役場職員・公助にも頼れず住民自らの対処が必要。(事前告知のない訓練開始に)取るものも取り敢えず個人的にもバタバタしたが、避難持ち出し用など日頃の備えが重要とも痛感。住民の皆さんにも真剣に考えてご協力をいただいた」と感謝。
参加者の一人・吉沢珠美さん(40)は「現実的にはもっと素早く動けるようにしたい。日中の仕事中は、夫と手分けして小学校や保育所にわが子らを迎え、高台にある知人の農業用ハウスに避難して落ち合うことにしています」とにっこり。
町総務課の奥山隆志防災対策係長は「全14集落の各区長を中心に住民が一丸となって自主的に活動。日頃の防災講演会などを通じ自助・共助・自主防災組織への意識がさらに向上、避難所への訓練参加数も昨年より増えた」と手応えを得た様子。
訓練本部長の森田弘光町長も30年前の阪神大震災や昨年の能登半島地震も教訓に「災害は忘れた頃にではなくて、いつでも・どこでも起きると意識。総合訓練を通じた自助・共助意識の喚起は重要」と話した。
同町は2022年度から避難所となる自治公民館など町内14施設の再整備(防水・防風、シャワートイレなど)も年次計画で進めている。